テンポよくに異世界冒険譚を楽しみたい人向け

 軽い文体と疾走感のある文章が、ともすればコミックを読み進めるかのよう。そういった意味で、読みやすさが作品の雰囲気に良くマッチしているのが特徴。

 一方で、展開スピード重視なのか。タイトルと煽り文(帯書き)を読んでいないと、どうしてこんな話が突然出てくるのだろう? こう首を傾げてしまう点があるところは、連載中である点。先ほども書いた様に、コミックを思わせる文章を思えばあまり深く考えずに先を読み進めると良い。

 タイトルにある「宇宙最強」と言う比喩表現は、作中でも出てくるのだが。如何せん、典型的な剣と魔法の世界なので「そもそも "宇宙" と言う概念を主人公以外知っているか怪しい」ところではある。あるのだが。主人公と我々読者は、宇宙ヤバい果てしない、規模が違いすぎる――ということを理解している。

 望むことが許されるなら、宇宙規模のヤバさと言うのをもう少し作品内に落とし込むことが出来れば……とも思う。

 小難しいことを考えず、肩の力を抜いて読むとスラスラ読めてしまう。ここがこの作品でもっとも偉大なところと言えるだろう。読者の我々はスラスラ読めるのだが、作中の主人公はスラスラどころか。毎回人間の尊厳と戦っているので、そのギャップも本作の続きを追いかけたくなる要素となっている。

 順調に? 立身出世を重ねて行く主人公だが、そこには必ず耐えがたい尊厳(オブラートに包んだ表現)との戦いが待ち受ける。うっかり主人公に感情移入しすぎて、便意を共にすることのないよう。あらかじめ、お手洗いに行ってから読んだ方がよさそうだ。

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