SFと言うジャンルは、何やら衒学的(げんがくてき)なものと思われがち。けれども、本作は鏡面の様に磨かれた表現。スッと入ってくる文章と、テンポの良いストーリー進行が最大の魅力ではないだろうか。
大抵の場合、読みやすい文章は内容が薄く冗長である。
だが、それは本作には全く当てはまらないのだから。これは一体どう言った魔法を使ったのか。何度読んでも、読後の充実感だけが残る。
ひとえに、作者の長い執筆歴と丁寧な物語作りが成せる技なのだと、私は思う。
本作が多くの人を引き付けて止まないのは鏡面のごとく磨かれた文章。美しい密度の描写。思わず目を細めてしまう小気味よい登場人物達のキャラクター。作品全体が確かな「実在感」を持ってグイグイとエピソードに没入してしまうのだ。知らずの内に。
物語の始まりから、転機、そしてラストに向けてのスパートは。F-104と言う「航空機」を知る人でも、そうでなくとも心拍数が自然と上がる。
――空を飛ぶということ。それは
この作品でしか味わえない高揚感、または地面に縫い付けられた私達が小説を通じて主人公達と共にあの空に向かえる。これはそういう冒険小説とも取れる。読み返す度に、新たな発見があるところも著者であるmibkai氏の確かな力量を感じ取れる。
気軽に触れられるSF作品であり、先に述べた通り冒険小説でもある。着飾っていないタイトルに惹かれて、読んでみて欲しい。