第17話 食事会①
食事会にフルールと向かうと既にクラスの人間は揃っていた。
話したくも無いのに静香とその取り巻きが俺の方に話かけてきた。
「リヒト様、昨日はどうなさったのですか? お体の調子が悪かったのですか?」
「心配していたのですよ…本当に」
「本当に大丈夫ですか?」
真理と祥子も混ざっている。
俺の虐めに加わっていたせいか、今じゃ二人は静香の取り巻きにしっかりなっている。
「パートナー探しですよ! 静香さんは要さんの勇者パーティに決まりですが、他の方は多分俺と同じで仲間を探す必要がある筈ですよ…少しでも早く仲間を探した方が有利…そう思い昨日は活動させて頂きました」
「えっ、そうなんですか?」
「パートナー探しですか?」
「そうですよ! 今現在の仲間と組むも良し、この世界の人間と組むのも良いと思います…ほら、こんな感じに」
そう言ってフルールをを手でさした。
「初めまして、リヒト様とパーティを組みましたフルールと申します…宜しくお願い致しますですわ」
フルールを見ると、遠巻きに見ていたクラスメイトが若干集まってきた。
逆に更に遠巻きに見ていた貴族たちは動かない。
フルールは顔が売れているから、貴族は近づきたく無いのだろう。
「その方がリヒト様のパートナーなのですか?」
祥子が俺に聞いてきた。
「そうだよ? 俺はまだ確定じゃないけど、皆はこれから魔王軍と戦うのでしょう? この会食は、確かに親睦会もあるけど、それ以上に戦闘の際の仲間や後ろ盾を探すのが、一番の目的の筈です…違いますか?」
「九条様、私…」
「静香様も、もしかして知っていられたのですか?」
「ええっ、当たり前ではないですか?ですが、安心なさい! まだ誰も仲間を確定してないのだから、これから探せば良いのです…それに要や満の友達ならきっとすぐに仲間に入れてくれる筈ですよ」
「「「「「解りました…」」」」」
多分、それも上手くはいかない筈だ。
確かに4人は仲が良いから、取り巻きも仲が良い。
だが、お互いの性格の悪さをしっている者同士、果たして組むだろうか?
特に真理と祥子はグループ内では下に見られがちだし、グループの外では『静香の権力をかさに着ている嫌われ者』にまで落ちている。
他の取り巻き三人もそうだ。
恐らくは難航する。
更に、クラスの男子は年齢的にやりたい盛りの男ばかり、警察というタガが無くなった今、果たしてそう言う事を我慢できるのだろうか?
このクラスにも満たちとは別に『危ない奴』も結構いる。
そんな人間と一緒の共同生活…しかも周りには誰も居ない。
何人の女が泣くか見物だな。
それを防ぐには『同性で組む』『親友で組む』が正しいが…
敢えて俺は教えない。
いや…待てよ
「静香さん、そう言えば勇者パーティって4人で確定なのですか?」
勇者パーティが4人なんて言うのはライトノベルや漫画の見過ぎだ。
今の4人はお嬢様にお坊ちゃまだ。
多分、家事は一切できない。
『世話役』が必要だ。
「そう言えば、聞いていませんでした…どうなのでしょう?」
「私の居た世界では、この様に魔族と戦う事はありませんが、高貴な方が何か行う時は、顔見知りの家事に強い仲間を1~2人入れるのは当たり前でしたが…この世界はどうなのでしょうか?」
「解りませんが、必要そうですね…実は王様から、ある程度自由に考えて良いって言われてますのよ…真理、祥子待ちなさい」
「「はい?」」
「二人とも勇者パーティに入れるように私が推薦しますから、此処に居なさない」
「ありがとうございます」
「静香様ありがとうございます」
「良いのよ…がんばりなさい」
「「はい」」
馬鹿な奴ら…特に真理、お前忘れてないか?
前に満にレイプされ掛かったのを?
四職(勇者 聖女 賢者 剣聖)はかなり優遇されるから、多分今度は誰も庇ってくれない。
あの時俺は真理、お前を庇った結果俺は地獄に落ちた。
俺が庇わなかった元の状態に戻る…それだけだ。
静香の取り巻きの一人が俺に声を掛けてきた。
「あの…リヒト様のパーティはメンバー募集してないんですか? もし募集しているなら、私も入れてくれませんか?」
お前…俺に頭から水を掛けたよな。
「ちょっと、少しは遠慮しなさいよ…あなた剣士じゃない? 私、これでも上級ヒーラーなんです、役に立つと思います…どうかな」
お前は笑いながら俺に蹴りいれてきたよね。
「胡桃ちゃんズルい…これでも私家事が得意なんです、雑用に如何でしょうか?」
お前は笑って見ていたよな…助けてくれなかった。
「俺はちょっとした事情で、戦わないかも知れないんだ…だから他の人を探して…ほら急いで行った方が良いよ」
そう俺が言うと蜘蛛の子を散らすように周りの女たちは立ち去った。
此処に居るのは静香、真理、祥子だけだ…
真理は「食事と飲み物をとってきますね」と席を外した。
今日の食事会は立食パーティのブッフェ式だ。
相変わらずパシリが好きなんだな。
要と満は女に囲まれているから、こちらに来ない。
馬鹿な女達…その二人はハズレだ…他のクラスメイトか貴族の方に行った方が良いぞ…まぁ言わないけどな。
静香と祥子と話していると、其処に守が合流してきた。
「君はたしか守だったよな」
「そうだよリヒト…どうだい今日は楽しんでいるかい? それで横に連れているのは仲間なのかな?」
「まぁね、俺の場合は、知り合いも居ないし、一から仲間を探さないといけないからな…まぁぼちぼち頑張っているよ…だけど美人だな…少し羨ましいぜ」
「守の彼女には負けるよ、お似合いだよ!」
俺は守が静香を好きなのを知っている。
だから、揶揄う意味で言ってみた。
「俺の彼女? 俺には彼女は居ないぞ」
「そちらの静香さんが彼女じゃないのか? 満や要に比べて気楽に話しているし…お似合いだからてっきりそうかと…」
「違います、私と守は昔からの友達なだけです」
「ああっ…違う勘違いだ」
「そうか、ならすまないな…凄くお似合いに見えだんだが…悪いな」
「まぁ、そう見えても仕方がないか」
そう言いながら守は満更でもない顔をしている。
「そういえば、守、真理と祥子をお世話係としてパーティメンバーに入れようと思うんだけど、どう思う?」
「良いんじゃないか? 多分満も要も喜ぶと思うぜ」
「そうよね…流石にあの中の輪に加わるのは嫌だから守から伝えておいてくれない?」
「解った」
「聞きにくい事を聞くが、なんで守には取り巻きが居ないんだ?」
答えは知っている…粗暴だからだ。
「俺は、あの二人と違って、モテないんだ」
「そうか? 鍛えられた筋肉に騎士の様な面構え、俺からしたらモテる男の典型的なパターンだが、世界が違うと違うんだな…悪い」
「良いよ良いよ、お前みたいなイケメンが褒めてくれたんだ、悪い気はしないから」
容姿や立場が違うと…良い奴に思えてしまうのが可笑しいな。
此奴が俺に一番暴力を振るっていた奴だ。
「そう言えば『剣聖』なんだよな、勇者パーティは複数婚が可能だから将来はハーレム持ち決定だ、多分この世界ならモテる筈だ…静香さんが彼女で無く、クラスの仲間にそういう相手が居ないなら、令嬢達と話してきたらどうだ?」
「俺はそう言うのは苦手なんだよ!」
仕方ない…俺は守の手を引いて、貴族の令嬢達の輪に近づいた。
明らかに笑顔でこちらを見ている。
俺はしがらみをまだ作りたくないから話すつもりは無い。
「綺麗なお嬢様…」
「私ですか? そんな綺麗だなんて…『麗しの勇者様』に…」
話を途中で遮った。
俺に好意を向けられても困る。
「『剣聖』の守を連れてきたので、良かったら輪にいれて貰えませんか?」
「おい…リヒト、あのな」
「良いって事よ…それじゃあな!」
「お前は一緒に居ないのか?」
「俺は連れがいるからな…頑張れ」
流石は貴族の令嬢だ、今日の主役は『四職』それとの縁を結ぶのが今回の目的なのだろう。
目つきが変わった。
「剣聖様なのですね…素晴らしいですね」
「流石ですわ」
どうやら無事輪に加われているようだ…
静香は、貴族の男性に囲まれている。
真理や祥子もそこに加わっていた。
俺はそれを確認すると壁際に居るフルールの元に向かった。
フルールは恐らく貴族に嫌われているのか一緒に居ると貴族が寄ってこないから楽だ。
「私を貴族避けにしていますわね」
「まぁな」
これで王族が来るまでは静かに過ごせそうだ。
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