第13話 黒薔薇の誓い
食事を終えてしまうとどうして良いか困ってしまった。
俺は『麗しの勇者 リヒト』ではない。
女性と二人きりで部屋にいるなど全く経験が無い。
さっきは牢屋という異常な場所だったから、多分裸の女性と一緒に居ても何も感じなかった。
しかも、自殺に追い込まれる程の虐めの中『女の怖さ』を知ってから、クラスメイトの女は俺にとって『気持ち悪いし、話したくない』そういう女だった。
だが、フルールは違う。
そう言った概念が無い。
そして外見は…物凄く好みだ。
さっきまでは意識して居なかったけど、今見ると凄い美人なのが解る。
静香がお嬢様だと言われているが、本物にか敵わないな。
「どうかされました? そんなに私を見つめまして」
「いや、フルールって凄く綺麗だなって思って」
日本人より更に黒い髪に、紫掛かった瞳…見つめているだけで吸い込まれそうな気がする。
「凄く嬉しいのですわ、ですがリヒト様から比べたら見劣りしますわ、まるでプラチナの様な綺麗な髪に宝石の様なグリーンアイ、それに私を色白と言いますが…リヒト様の方が色白ですわ…まるで神話か絵本の王子様が目の前に居る様な感じなのですわ」
この姿は『麗しの勇者リヒト』をベースに女神が作ったから当たり前だ。
しかも、思いっきり食べても体重すら変わらない気がする、下手したら老化すらしないかも知れない。
「そう、ありがとう」
「いえ、どうしたしましてですわ…褒められるのは嬉しいのですが、口説くという意味でなら必要ありませんわ、抱きたいのなら何時でもお相手しますし、お望みがあれば何でも致しますわ、私に必要なのは『裏切らない事』『誠実な事』それだけなのですわ…まぁリヒト様程の美貌だと、それすらも揺るいでしまいますわね」
なんだか、思った以上に好かれている気がする。
「なんだか、思った以上に…その好かれている気がする」
「好かれるも何も、私、リヒト様を愛していますわ、歴代の黒薔薇の中でも私はかなり多くの人間を拷問で殺してきましたわ、そのせいで『黒薔薇』だけじゃなく『フルール』の名前まで頂いてしまったのですわ、ただ、私は心が少し歴代の黒薔薇より弱かったのか、元からあった性癖なのか、定期的に『人を刺したい』そういう衝動に駆られますわ…これがある限り、普通には生活出来ませんわ、だって定期的に人を滅多刺しにしないと心がそわそわしますの、普通にそんな事したら確実に殺してしまいますし、善良な方を殺したら犯罪者になりますわ」
「確かに、そうかもな」
「間違いなくそうなのですわ、これは『黒薔薇』ではなく私だけの物なのですわ…これが性癖であるなら、ある意味凄く変態なのかもしれませんわね、見目麗しく、こんな性癖にも付き合ってくれて、私の壮絶な過去を知ったうえで好意を寄せて頂ける…これで愛されない訳ありませんわ」
俺が可笑しいのか?
かなり酷い虐めにあったせいで『そんな事どうでも良い』と思える位に他人が死のうが関係ない…そう思える。
自分の敵なら…どうでも良い。
そう思える…今の俺が、もしあの時、あの場所に戻ったら。
湯浅真理を見捨てている…絶対にだ。
「多分、俺もフルールに近い考えなのかもしれないな…『裏切らない事』『誠実な事』それが多分一番大事だ…そして更に好みなら尚良いな」
「私たち似た者同士だったのですわね、生き方が違うようですが…考えは同じなのですわ…リヒト様、黒薔薇とは本来は国ではなく、たった一人に仕えるのですわ、その一人の為なら家族ですら拷問に掛け皆殺しにするのも厭わない存在、それが『黒薔薇』なのですわ、その一人がリヒト様なのです」
多分これが俺が欲しかった者だ。
何があっても絶対に裏切らない存在。
「なら、俺は黒薔薇じゃないけど、生涯、フルールを裏切らない…約束するよ」
「それじゃ誓いは成立ですわね…それじゃ」
フルールはベッドに入ってポンポンと横を叩いた。
「それは…」
「とりあえず、遅いし一緒に寝ましょう…これだけ大きいのですから充分寝られますわね」
「流石に、俺はソファーで寝るよ」
「黒薔薇の誓いは婚姻より重いのですわ…さっき申しました通り、私が抱きたいなら何時でもOKですわよ、それに私…それ以上凄い事をしておりますわ」
そう言いながらフルールは顔を真っ赤にした。
確かに、今思えば…裸で俺に跨って滅多刺し…流石に驚いて良く見て無かったが凄い事だ…
「そうだね」
外見は『麗しの勇者リヒト』でも中身は高校生。
手を繋いで寝るのが精いっぱいだった。
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