第4話 女神の作りし者
可笑しいな? 俺は校舎から飛び降りて死んだ筈だ。
生きているのか?
そんな訳はない…
それより、目も見えない…まさか死なないで植物人間にでもなったのか?
「貴方、本当に面倒くさい事してくれましたね」
綺麗な女性の声が聞こえてきた。
こんな美しい声聴いた事も無い。
「美しい声なのは当たり前よ! だって私は女神だからね」
女神…女神ってあの女神?
「そうよ! その女神よ…あんた本当に面倒な事をしてくれたわね…まさか異世界に転移の途中で自殺するなんて、こんなの前代未聞よ、全くどうしてくれるのよ!」
異世界転移? あのライトノベルとかで良くある奴か?
「そうよ、それ! 貴方のクラス全員が異世界から転移の魔法が掛けられたのよ…私は、異世界に転移される人が困らないように、ジョブやスキルを与えるのが仕事なのだけど…あんたね、死んだ状態で魂だけでこの世界に来たのよ…こんなの前代未聞だわ」
クラス全員が異世界転移?
嘘だろう…ようやく一矢報いるチャンスだったのに、異世界に行かれたら…終わりじゃないか。
他の奴らは?
「はぁ~貴方が何をしていたのか解らないけど、他のクラスメイトならもうジョブやスキルを与えて転移済みよ…ただ異世界には全員が転移されないと、たどり着かないから、まぁ恐らく間(はざま)に居るわ…問題は貴方よ、貴方が転移魔法が掛かった時に死んだから肉体はそのままで魂だけで此処に来たのよ」
なら簡単だ。
俺が異世界に行かない選択をすれば、異世界に転移されないなら、その全員が間に居るままだ。
それが良い…
「ふざけた事言わないで、あの世界の人々は希望を込めて貴方達を召喚したのよ…大きな犠牲を出してね、行かなかったら本当に困る事になるのよ…世界の危機なのよ」
彼奴らが困るならそれで良い。
あった事も無い異世界人なんか…知らないな。
それに今『俺は魂だけ』体が無いなら行っても、その世界で恐らく漂うだけだ…なら行かない方が良いに決まっている。
「体なら、私が用意します、お願いですから異世界セルドグランへ行って下さい」
彼奴らと一緒なんて嫌だね。
そのまま間とやらで一生を過ごせば良いさ。
「貴方、何でそんなに拒むわけ…他の子はあっさり引き受けたのに…少し記憶を見せて貰うわよ…そうかこれね」
世界の危機と言うなら
最悪、異世界に行くのは仕方が無い。
だが、一緒に行動するのは…絶対に断る。
「それじゃ、仕方が無いわ、向こうに着いたら別行動で構わないわ…それに私が貴方にあげる体は、他のクラスメイトと違い、黒毛黒目じゃないから違って見えるわ…向こうに着いたら召喚に巻き込まれた、そう言う風にして別行動すれば良いと思う…これでどうかな?」
彼奴らと別行動なら…妥協するしかないな。
見知らぬ異世界人の世界でも滅んだら目覚めが悪い。
「そう、良かったわ…それじゃ貴方の魂を私が作った唯一の器に入れるわ」
仕方ない...お願いします。
これで、聖夜じゃなく別人になれたのなら…それで良いのかも知れない。
彼奴らとは関わらないで生きていけるなら御の字だ。
よく考えたら、人生が詰んで終わりだから死んだんだ。
新しい世界で『聖夜』でなく別人としてやり直せるなら…それはそれで良い。
「どう、私が作った体は?」
「そうですね、随分と肌が白くて、髪は、プラチナブロンドなんですね…あっ喋れる」
「さっきまでは肉体が無かったから念話で話していたのよ、それより凄いでしょう! 創造神を目指し作った時の私の最高傑作なのよ! 女神である私が作った理想の男性なの、上手く造形できたのはこの一体だけ、しかも魂は宿らなかったんだけどね…まぁ才能無さそうだから創造神の道はもう諦めたわ…この女神イシュタスが唯一作った最初で最後の作品を貴方にあげるわ…さぁ喜びなさい」
「あの…それって創造神様が作られた人より劣るんじゃないですか?」
「失礼ね、量産じゃなく、一生懸命作ったのよ、完全オーダーメイドよ!だから、平均よりは上よ」
簡単に言えば並みって事だな。
「そうね…でも容姿は凄いわよ」
そう言って女神イシュタスは手鏡を渡してきた。
女神が自信を持っていうのが良く解る。
ただイケメンというだけじゃない…しいて言うなら『神々しい』
こんな整った顔は芸能人にだっていないだろう。
プラチナブランドの髪。
切れ長で透き通るような瞳…自分で見ていて吸い込まれそうになる。
まるでギリシャ神話に出てきそうな美しい男性。
これに比べたら、金城なんて只のモブだ。
女神がいう『凄い容姿』とは此処迄の存在を言うのか…
「美しい…」
「当たり前じゃない…その容姿は『麗しの勇者 リヒト』をモデルにして、更に私の理想を詰め込んだんだもの、美の女神すら『これに魂が宿っていたら…祝福をあげるのに』と言った位よ…」
「凄いですね…美貌だけでなく勇者でもあるんだ」
「ごめん、リヒトは勇者だけど…魔王に勝てなかった勇者なの…多分、他のクラスメイトの中に居る、本物の勇者より劣るわ…まぁ貴方達の中で真ん中位ね」
クラスメイトと離れて1人暮らすなら…それで充分だな。
「充分です…ありがとうございます」
「そう? それなら異世界セルドグランに行ってくれる?」
「はい」
こうして俺は異世界に旅立つ事になった。
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