第2話 悲劇の始まり

俺が虐めの的になったのは些細な事だ。


簡単に言えば『虐めを助けた』それが元で虐めの的が俺に変わった。


それだけだ。


あれは半年前。


「いやぁぁぁー――助けて」


俺が校舎裏の焼却炉にゴミをすてに行った時だ。


校舎の隙間の辺りから女の子の悲鳴が聞こえてきた。


当時の俺は正義感が強かった。


誰かが困っている。


そう思ってその場所に駆けつけた。


これが全ての始まりだった。


同じクラスの湯浅真理が3人の男にいたずらされていた。


とりたてて美人と言う訳でない、強いていうならクラスの真ん中の美貌だ。


ただ、オドオドしていて友達も少ないから目をつけられたのだろう。


見た瞬間から、何が行われているのか解った。


彼女は押し倒され…スカートが捲られ太腿に男の手が滑り込まされていた。


「お前ら、何やっているんだ!」


俺が声を荒げて怒鳴ったが…


「別にぃ~俺を誘った女が居たから抱いてやろうとしただけだ」


真理の顔を見ると、明らかに泣いていて、殴られたのだろうか口が切れていた。


「お前、これは洒落にならないぞ…教師に話すからな」


「どうぞ、言ったら困るのはお前だ」


何を言っているのか解らない…


だが、周りを見ると3人の男と1人の女が俺を笑いながら見ていた。


俺は教師に言いつけたが…何も起きなかった。


理由は直ぐに解った。


あの場に居た4人は地元の実力者の子供だったからだ。


真理を押し倒していたのは


金城 満(きんじょう みつる)

父親は資産数千億の金城グループの総帥で1人っ子。

この地域に金城グループに逆らえる存在はいない。

本来は父親は常識人だが満だけは例外で甘い。

満は甘いマスクで茶髪、一見ホストに見える優男。

表向きはキラキラメンバーに見えるが、裏では同じような事を多数している。


此奴だった。


横で見ていた奴らは…


九条 静香(くじょうしずか)

母子家庭だが、母親九条電機チェーンの社長、九条電機は日本全国に62の大型店舗を持つ企業だ。金城グループとの付き合いから親同士も仲が良い、同じく親ばかで娘が何をしてもお金で解決。

静香は、見た目は派手な感じのお嬢さんって感じだ、背はやや高く可愛いというより美人、少女漫画なら、お姉さんって感じだな。


西園寺 要(さいおんじ かなめ)

 生徒会長をしていて、見た目は日本男児の好青年、父親が県知事で叔父が警察署長、金城グループが父親の後援会の会長な為満とは親友のなか…表は優しい好人物だが、裏では満と手を組んでいる。


近衛 守(このえ まもる)

 父親は金城グループ系列の子会社の社長。武道をしていて、柔道部、空手部の猛者すら勝てない位強い。満のボディガードをしている。

噂では前の空手部の主将を半殺しにしたらしい。


この学校のビック4と呼ばれ、親が何でも揉み消すからやりたい放題の最悪な奴だった。


俺は転校生で此奴らの事を知らなかった。


その結果は最悪だった。


事実は挿げ替えられ『俺が湯浅真理にいたずらしようとしていたのを通りかかった4人が止めに入った』


そうされた。


4人を恐れた湯浅真理が何より俺に襲われた。


そう証言した為…4人は校長に褒められ、俺は停学。


俺の両親は最初怒って抗議してくれたが、すぐに『止めた』


なんて事は無い親父の勤務する会社の取引先が金城グループだった。


多分長い物に巻かれたんだろうな…


途中から『どうせ、そのうち転勤するから暫くの辛抱だ、欲しがっていたPCを買ってやるから暫く我慢しろ』だとよ。


親父の役職が主任から課長になっていたのと、お袋がブランドのバッグを突然手に入れていたから…多分そう言う事なのだろう。


かくして、俺は『同級生に乱暴を働いた最低野郎』そう言われ虐めの的になった。


恐らく誰もが真実は知っている。


俺ではなく悪いのは4人だと。


だが、4人に逆らえないからこの捏造された話がそのまま『真実』になっている。


例えあの場で行われた事の動画が手に入っても…意味はない。


4人が違うと言えば、それでおしまいだ。


馬鹿な事をした…あの時、俺は湯浅真理を見捨てるべきだった…


助けた奴が俺を裏切り、俺が暴行魔だと訴えた。


そして、廊下で会う度に罵声を浴びせてくる。


こんな『クズ女』を助けた為に俺は…このざまだ。


今度もし、同じ事が起きたら笑って見捨ててやる。


そう思った。

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