第7話 選定の義②


「俺は上級戦士だとよ、これは外れだよな…ついてねーよ」


「私は魔法使いだって、魔法は使えるけど、なんか弱そうじゃない?」


「そんな事ありませんよ! 充分恵まれたジョブです、ジョブもそうですが、異世界の皆さんには優れたスキルもありますからご安心下さい」


「だけど、四職(勇者 聖女 剣聖 賢者)はずうっと凄いんでしょう」


「ええっ」


話を聞いた感じだと、まだ四職は出てないようだった。


自然と視線はこちらへと向く。


俺を見ているんじゃない…横の4人を見ているんだ。


まぁ、満 静香 要 守はクラス、いや学園の中心人物。


此奴らが四職になる…そう思っているんだろう。


女神や神の目って節穴なのだろうか?


確かに能力は高いのかも知れないが、もう少し真面な奴を選べば良いのにな。


少なくとも日本の神や仏なら此奴ら4人は選ばないと思うぞ。


それとも『選ばなければならない』そんな事情があるのか。


まだ順番は来ない…


待っていると、俺が4人以上にムカつく相手、真理がこちらに来た。


「静香様、私もう終わったんですが、良かったら結果見ますか?」


なんだかの取引があったに違いない。


真理はあの事件の後に静香の取り巻きの1人になっていた。


恐らくは満ではなく俺を悪者にする代わりに、親にはお金が支払われ『此奴に手を出さない』そんな約束でもしたのかも知れない。


よくやるよな…自分を犯そうとした人間のグループの女の取り巻き。


しかも笑顔で居るなんて、ただの馬鹿だ。


『見捨てれば良かった』 


そうすれば、きっとあの後も幸せに暮らせた。


頭の中で、そんな思いで一杯だ。


俺の中では4人以上にこの女が嫌いだ。


「へぇ~真理は終わったんだ」


「どれどれ、見せて見ろよ」


「確かに、どんな感じか気になるな」


「見てやるか?」


上から目線だが、良好的なのは見て解る。


真理の記録紙に書いてあったのは…


湯浅真理

LV 1

HP 60

MP 80

種族 人族 異世界人

ジョブ ヒーラー

スキル:翻訳.アイテム収納、 聖魔法(回復限定)レベル1


こんな感じだ。


実際に浮き出た文字は異世界の文字だ。


だが、何故かその文字の意味が俺には解る。


多分『翻訳』これがあるから、意味が解るのかも知れない。


「あの…静香様、そちらが、その『リヒト様』ですか…凄く綺麗ですね、私にも紹介してくれませんか?」


「そうね、リヒト様、紹介させて頂きますね、此奴は湯浅真理って言いますのよ、まぁ『妹』みたいな者です」


妹とういう名の『下僕』だ。


傍で見ていたから知っているよ。


「そうですか、俺の名前はリヒトって言います、宜しくね!可愛らしいお嬢さん」


そう言って俺は軽く頭を撫でてやった。


別に本当に『可愛い』なんて思わない。


『紹介して欲しい』そう言われた時静香は僅かに嫌な顔をした。


こんな事で喧嘩などしないだろうが、むっとしたのは確かだ。


「よよよ…宜しくお願いします」


顔を赤くして小動物みたいでかむ姿は以前の俺なら可愛いと思った筈だ。


だが、今の俺は何とも思わない。


さっき頭を撫でたのはわざと静香の機嫌を損ねる為だ。


これで後で静香に嫌味の一つ位は言われるだろう…いい気味だ。


「真理、もう用は済んだでしょう…あっちに行きなさい」


そう言われた真理は、悲しそうな目で元居た方に戻っていった。


結局、俺達の番になるまで四職は出なかった。


あの女神イシュタスは有能だと思っていたが…


違ったようだ。


結局…


勇者は要で聖女は静香、剣聖は守だった。


満は賢者で凄く怒っていた。


今迄下に見ていた要が勇者になった…気分は良くないだろう。


何時ものキラキラスマイルが出ていない。


四職はその特殊性から、個別でジョブやスキルについて別室で説明するそうだ。


他のクラスメイトはもう既に用意された部屋に戻り、4人もこれから別室に行くそうだ。


「それじゃ、リヒト様、またね」


「「「またな」」」


4人は執事のような男性に案内され去っていった。


◆◆◆


いよいよ俺の番だ。


別に期待はしていない。


女神の話では平均的な筈だ、まぁこれであいつ等から離れた生活が出来る。


あと少しの辛抱だ。


冒険者になろうか?


公務員的な仕事に就くか…それともこの国の大学みたいな場所があればそこで学ぶか…どんな生活でも前よりは幸せだ。


これから先は…かかわらない…それで良い。


何時しか幸せに暮らしていれば、恨みもきっと忘れる。


それで良いんじゃないか…


「さぁ、記録紙を胸の位置にあわせて、こちらを見て下さい」


なんかレントゲンみたいだな。


男が呪文を唱えると記録紙に文字が浮かんだ。



見た瞬間に神官が驚いた顔をしていた。


「こっこれは教会を通して教皇様に相談しなければ…ああっ国王にも相談を…私ではどうして良いか解らない…少しお待ちください」


そう言うと俺に対して祈ってから出て行った。


何がなんだか解らない。


残された俺は記録紙を見た。


あの女神…やってくれた。


良い女神だけど…ポンコツなのかも知れない。
















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