5.おかしなことじゃないはずです
「セクハラですッ! それはもう、組織犯罪的なセクハラですッ! お
「今のうちに、文字通りツバつけとけば、育って帰ってくるかも知れないじゃん! 御利用は計画的に、だよ、ママちゃん!」
「利用って言いましたねッ? 計画的って言いましたねッ? どんだけ利息を巻き上げる気ですかッ?」
「さ、最近は
「ボキャブラリーッ!
「いやー、今までそんな趣味なかったんだけどさ。ちっちゃいと、女の子も可愛いよね。オトコにあざとい感じが、まだなくってさ!」
「じょ、じょ、冗談じゃありませんよッ! 被害範囲を特定もできないんですかッ?」
「だって、
「
「どうして、わかってくれないんですか……? おとなしく、普通に、ちゃんとして……なんて、押しつけたくないですけれど。皆さんは年齢比で、ちょっと、アクセル踏みすぎですよ」
加えて言えば、ブレーキを踏んだ形跡がどこにもない。まさに事故だ。
そして事故だけに、エスカレートを放置してはいられない。加害者なら良いというわけでは、もちろんないが、こと性的なあれこれにおいて、女の人生、大事故の被害者になるリスクが圧倒的に高いものだ。
「今の時代だって、女の子が性的に
「攻勢なくして勝利はありませんよ、
「んー、まあ、ママちゃんは確かに、十九歳まで乙女の陰キャぼっちだったから、そういう人生観も無理ないけどさ」
「お母さんだって、最後は積極的だったじゃないですか。わ、私たちが、ええと、はしゃぎすぎたのもありますが」
「私を、どんなにからかってくれても良いです。皆さんのおっしゃる通りですし、その皆さんのおかげで、今、幸せなんです。感謝してるんです」
不意をつかれたのか、
「人生観なんて大層な
「今の私は、皆さんの母親なんです。説教くさいことだって言います。皆さんに……この人生こそは、ちゃんとした人と出会って、幸せになって欲しいんです」
「
「ママちゃん……」
「お母さん……」
「特別に感謝している分、重くてすみません。でも、母親が、娘に幸せになって欲しいと願うのは、おかしなことじゃないはずです」
親から子供への
それでも、自分が知る限りの、幸せに近づく方法を子供に伝える。示す。間違っていると思えば
できることなんて、それぐらいだ。だからこそ、できることをやるだけだ。やらない言いわけなんてない。
「申しわけありませんでした、
「なんか、ありがとね。ママちゃんが言ってること、素直にわかるよ」
「か、感激しました! 私、お母さんの娘に生まれて、良かったです!」
「皆さん……!」
母が娘たちを、娘たちが母を、抱きしめる直前に、だがしかし玄関ドアが開く音と、ただいま、という明るい声が聞こえてきた。
ついでに
「おかえり、パパちゃーん! おふろにする? ごはんにする? それとも一緒におねんねするーっ?」
「妻の
「私たちのお父さんでもありますから! 問題ないです、お母さん!」
「父と娘……背徳的な響きです」
「一呼吸で最悪の問題にしないでくださいッ! 人としての最終絶対防衛ラインですよ、それッ!」
「もー。可愛い娘たちが、無邪気に甘えてるだけじゃない! ママちゃんは水くさいなあ」
「邪気が
男に特有の、美女性善説という迷信がある。女の邪気を正しく見抜ける男は、多くない。
まして分厚い父親フィルターがかかっていれば、なおさらだ。回避力も防御力もゼロだ。
「ぜ、ぜ、
おだやかな平日の夕暮れ
幼児でも女三人寄れば
〜 そしてあなたに会いに行く? めでたし、めでたし! 〜
乙女カルテット!! 〜愛と欲望は時を越える、かも知れない〜 司之々 @shi-nono
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