運命に翻弄された兄弟の愛が胸を打つ。

 親の庇護なしに生きる兄弟、由と永。ある日、彼らの前に一人の男が現れ、二人に銃を差し出して告げる。『その銃で人を打て、さもなくば命はない』と。生きるため、そして弟を守るために手を汚すことを決意した由は命令を実行する。そこから二人の運命は一転し、『粛清』を義とする国家機関の配下となる日々が始まる……。
 荒廃した世界の中、互いを守ることだけを一心に考える兄弟。その想いは兄弟のそれを越えた感情へと転化するが、そこに生々しさは一切なく、むしろ高潔で美しい。
 守るために殺し、殺されないために守る。殺伐とした世界の中で叫ぶ兄弟の声が悲痛に胸に訴えかける。過酷な運命を背負わされた兄弟の物語がどのような結末を迎えるのか、見届けたいと思わずにいられない作品です。