最終夜
最終夜
この物語の中に、わずかにでも真実が含まれているとは思わないでほしい。
ましてや、どこかに現実の体験が反映されているなどと、ゆめゆめ考えてはいけない。
もし万が一。
あなたがどこかに真実や現実を読み取ってしまったならば。
そのときはどうなってしまうのか――――――、僕には何の保証も出来ない。
これは夢なのか現実なのか。
あるいは誰かが書いた物語なのか。
もしかすると、自分が書いている物語を自分で読み上げているだけなのかもしれないし、ただ過去の思い出を繰り返しているだけなのかもしれない。
いずれにせよ、いまの僕にはどうでもいいことだ。
これは、とある兄と妹についての物語だ。
兄が妹を想い、妹が兄を想う。
そういう物語だ。
愛情と。幸福と。そして何より――――恐怖。
これは、僕が書く、僕が紡いでいく物語だ。
それが真実かどうか僕には分からない。
それが現実かどうか僕には分からない。
ただ妹がいて、僕がいる。
それだけだ。
それは、きっと実話ではない。
それは、きっと実妹でもない。
真実でも現実でもない――――、
虚構の妹の物語。
そして僕は書き始める。
僕と妹の二人だけの百物語を。
その物語の名は――――、
―― 虚妹怪談 ――
〈 了 〉
虚妹怪談 カクレナ @kakurena
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