田舎の海が嫌いな男子高校生の主人公は、無味乾燥な毎日を過ごしていた。だから、来たくもない海くらいしか、居場所が見つからない。
蜃気楼が現れたその日、主人公はいつもの海辺で、カフェを開くという一人の女性と出会う。女性もまた、居場所がないらしいのだが、のらりくらりと詳しいことははぐらかされてしまう。そして主人公は半ば強引に、女性が経営するカフェのアルバイトとして働くことになる。
しかし、その海辺のカフェにやってくるのは、夜を住処にしている妖たちだけだった。様々な妖たちを接客する主人公は、女性にある質問をする。
とても読みやすい文章で、それでも主人公が抱える鬱屈した感情や、女性の不思議なたたずまいが、手に取るように分かる。
しかも冒頭に石燕の抜粋を持ってくるという、知識の豊富さが垣間見える。
素晴らしい書き手だと思う。
是非、御一読下さい!
タイトル通りの、現代あやかし物語ですが、陰湿さやおどろおどろしさは無く、ライトな感じです。かといって某◯夜叉みたいなギャグでもなく、物語シリーズに近いのですが、あそこまで読む人を選ばないと感じました。
主人公の青年は、その年代にありがちな他者との境界を作りたがる病(?)の真っ只中で、その設定も物語の不思議さと相まっています。
かといって終始、幻想的な雰囲気で彩られている訳ではなく、クラスメイトのキャラクターを通して、しっかりと現実と幻想の書き分けがなされており、読後に更なる興味と安心感を覚えます。
カフェの主人が語る、あやかしと現世との関わり方が、実に飄々としていて好みでした。
短編では勿体無い物語です。
ぜひ、続編を読みたいなと思わずにはいられませんでした。
海辺でカフェを開いているミステリアスな女性『かぐら子』さん。
そのカフェにアルバイトに来ている僕。
オシャレな店だけど田舎には不似合いで客も来ないんだけど、カフェには実は秘密があって……
短編なのであらすじはこの辺にして。
この設定だけでも魅力的ですが、物語の中にはさらに魅力がいっぱいです。
淡々としながらも惹きつける語り口、目の前に浮かび上がるような風景描写、そしてなんといっても魅力的なキャラクター達!
短い中に長編を読んだような濃密さがあるのですが、本当に読みやすいんです。
そして昼と夜との世界とのギャップがまた素晴らしいんです。
そして描かれた世界観が深くてなんとも魅力的なんです。
とてもきれいにまとめられた魅力的な短編です。
まずはお気軽に読んでみてください!
私も続きを読みたい気持ちでいっぱいです。