流麗に語られる中華風ファンタジー叙事詩

世界が変わる瞬間は、和風だろうが洋風だろうが、ましてや中華風であろうが、どこでも興味をそそるもの。
本作は中華風ファンタジー絵巻とでもいいましょうか、神獣の夢とされる世界が舞台となっています。
その中での変革は、ほんの細微なものに過ぎず、しかし着実に積み重なっていて、思わぬ方向に転がります。
これが非常に面白い。
特に信仰に関しては、森羅万象のあらゆる事象(変怪)が、ひょんなことから偶像化されて崇められていく様は、裏事情を知る読み手にとっては滑稽にも思えたり、得心したりするものです。
その中でも龍はひときわ異彩を放つ存在で、人々は翻弄されていきます。

このお話はオムニバス形式で、中心となる人物が各話に配置されてはいますが、全体で見た主人公は神獣の夢である世界であり、その現身の青年・如朦でしょう。
彼は眺めることしかできませんが、読み手である我々もまた、この物語を追うことしかできません。
ただ彼と違う点は、読み手は世界の変革を楽しめるということでしょうか。

叙事詩が好きなら、本作は一読の価値アリです。
あっという間に読み手を世界に惹きこませる筆力があります。

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