野生の中島敦。ちょっと信じがたいレベルの麗筆。圧巻の耽美なる神話世界。

 最初に1話目を開いたとき、『読ませる気があるのか?』と思いました。
 Web小説にあるまじき改行の少なさ。極めて高い漢字率とルビ率(私も人のことは言えませんが)。
 けれど、最初の一段落目を我慢して読み下し(そう、冒頭から漢文や擬古文を読むレベルの硬さがありました)、二段落目に差し掛かってから、第一話完結までの記憶がありませんでした。
 あれ? と思って冒頭に戻り、読み始め、気が付くとまた第一話の終わり。

 夢中になる、

 ――ということを、久しぶりに思い出しました。
 語り口は優美にして端麗。世界観は驚くほど重厚。
 中島敦の『山月記』や『名人伝』を思わせる、『耽美』としか言いようのない素晴らしいストーリー。
 間違いなく読み手を選ぶジャンルではありますが、騙されたと思って読んでみるべきです。

 ただ、不満があります!
 第一話、第二話冒頭辺りまでは『神話』だった内容が、じょじょに群像劇化していったところまでは良かったのです。第三話ラストのどんでん返しは息を呑みました!
 けれど第五話で群像劇ですらなくなって、セリフマシマシ、ありきたりな小説になってしまった!(いや、これはこれで面白いですよ!? 一気に読破するくらいに超面白かった! ですが!!)
 これはこれとして、武石氏が紡ぐ神話がもっともっと読みたい!! そう思って氏の小説一覧を訪ねたのですが、神話は無かった! 無かったのです!! つД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚

 と、ワガママを言っても仕方ありません。
 総じて高濃度で高品質な、本当に素晴らしい作品でした!! \\\\٩( 'ω' )و ////

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