この物語の主の人物たちは「赦さない人」を抱えています。でも、本当は分かっているのです。すぐに赦すこともできるのです。そして赦そうとします。でも、いざ赦そうとしたとき、心の奥底にいる「赦せない人」が目を覚まします。
この物語の多くの人物の心にはこの「赦せない人」がいるのです。
「赦せない人」が心を支配したとき、再び「赦さない」という思いで赦そうとする相手を攻撃し、後悔し、苦しみます。「赦せない人」がいるから「赦さない」。負の輪廻は永延と続きます。
その苦しみのなか、やがて一人一人が気づいていきます。「赦せない人」の正体を。その人を許さない限り、前には進めないことを。
赦すべき人。それは「自分」
「何もできなかった自分」、「知ろうとしなかった自分」、「無能だと思う自分」、「傷つけてしまった自分」、「守ろうとしなかった自分」、「思いを伝えられない自分」
その自分を赦したとき、全ては動き出していきます。
これは、心の中の自分と向き合い、人と人との繋がりの中で、本当に「赦し」を受けるべき人に気づくまでを描いた心に響く物語です。
是非、お楽しみください。
「あの娘が空を見上げる理由」の第三部です。
第一部から続けて読むほどに、登場人物たちへの感情移入が強くなることでしょう。高校生だった彼らが大人になり、新たな地での困難を乗り越え、今回は更に降りかかる複雑な問題に直面し、迷いながらも助け合って立ち向かっていきます。しっかりと前を向こうとする姿には、渾身のエールを送りたくなります。
これまで露わになっていなかった心の奥底にある葛藤や悲しみに向き合う彼らに、幸せになって欲しいと切に願いたくなります。
文章は丁寧で読みやすく、躓くところなく読み進められます。
揺れ動く心の行方を最後まで見届けたい、そう思わせてくれる物語です。
本作は、北海道と京都を主な舞台とした群像劇の三作目です。
シリーズものとはいえ、作中できちんと過去も語ってくれるので、本作から読み始めても大丈夫!
むしろ、濃密な大人の人間ドラマを楽しみたい方には、三作目の本作をお勧めしたいです。
複数の人物の目線で進む物語ですので、境遇や職業も様々。それなのに、どの人物像にもリアリティがあり、作者様の知見の広さには脱帽です!
特に複数種類のお仕事が、まるで実際に体験されたかのように描写されていることに、シリーズ通していつも驚いています。
(物凄い数なので、全ての職業に就かれたご経験はおありではないと拝察しています。ご経験者でしたらすみません……!)
まるで、連続ドラマを観ているかのように説得力のある物語。ぜひご一読ください!
そして、物語にどっぷり浸りたい皆様は、過去作も併せてお読みになることを、強くお勧めします。
かくいう私は三度空を見上げております!
第一章まで読んだ時点でのレビューです。
『あの娘が空を見上げる理由―赦し―』は、北海道を舞台にした人間模様の群像劇。
本作は『あの娘が空を見上げる理由―憧憬―』『あの娘が空を見上げる理由―結―』につづくシリーズ三作目にあたります。
この三作目から読んでも大丈夫です。自分も本作から読みはじめたのですが、物語にすんなり入りこめました。
むき出しの感情であったり、はたまた繊細な機微を著者が丹念に描くことで、登場人物たちはみな生き生きとしています。わけても、手作り家具工房を営む家具職人の正人と、京都でスペースデザイナーとして働いている美葉とのやりとりには、微笑ましさを感じました。
もっとも、先述したとおり本文は第一章までのレビューです。ふたりが今後どうなっていくのかはわかりません。引きつづき注目です!
北海道を舞台に繰り広げられる群像劇。
三部作目ということですが、登場人物と今までのあらすじを載せてくれているので安心してください。
わたしはここから読み始めたので、作者さんにたびたびアホな質問をしましたが、優しく丁寧に教えてくれました。おかげで、新参者ではありますが、あっという間に登場人物たちに愛着を感じるようになりましたよ。
多彩な登場人物たちの設定がしっかりしているので、まるでドラマを見ているような錯覚に陥ります。
ときめいたり、ハラハラしたり、イライラしたりと大忙しですが「最後まで彼らを見届けたい」そんな気持ちにさせてくれます。
大人たちのドラマを、ぜひあなたも覗いてみてください。
連作小説の第三部に当たり、簡潔にまとめられたこれまでの「あらすじ」を読むことで一層物語を楽しむことができると思います。
家具職人の正人さんと、高校生の頃その仕事に影響を受けたスペースデザイナーの美葉さん。これまでの想いが結ばれて、再会を果たすところから物語は始まります。
丁寧に描かれたその描写はまるで情景を映像で見ているように写り、直接の心情だけでなくその動作からも、二人の純真な心が伝わってきます。初めからクライマックスを観ているように惹きつけられました。
そして揃った同級生……一人一人にそれぞれの人生がある、「設定」や「登場人物」では片付けられない生身の人生の重なりを、この小説で感じることができます。
現実もそうであるように、「恋愛」の成就は一つの関係性の変化に過ぎず、それがゴールではありません。絶えず変化していく人々の関係性が折り重なり、紡がれていく――そんな「現代ドラマ」を見守りたい方に、是非おすすめします。
こんなに細やかに感情を追い、現代の問題に切り込んでいく作品はそうそうない!
ぜひ読んでいただきたいし、なんならドラマで観たいぐらい。
丁寧に描かれる暮らしと、もつれていく人間模様をつづる群像劇です。
主人公達が高校生だった頃から始まった三部作の三作目にあたりますが、最初にこれまでのあらすじがあるので大丈夫!
(私は一作目から一気に追いましたが……)
確かにそこに生きている登場人物たちの悩みと喜びが胸に迫ります。
いつでも北海道の広い空を見上げてきた女性、美葉を軸にして、今を生きること、誰かを愛すること、愛されることの難しさと素晴らしさを受け取って下さい。
完結まで目が離せない、そして完結したらロスにさいなまれるだろう作品です。
視聴率のよかった朝ドラなどが最終回を迎えると○○ロスなどと言われたりします。主人公たちが奮闘する姿を毎朝見て、さ、自分も頑張ろうとその日一日をスタートする、そんな日々が習慣になり、いつしか力の源になっているのです。
自分にとって、こちらの作品はもはやそんな領域に入っています。
北海道でちょっと風変わりだけれど気のいい青年とそれを取り巻く高校生たちの友情物語…最初はそこからでした。だけど今やその高校生たちもそれぞれ就職し、社会人になっています。
人生に起承転結などは無く、その時その時にいろんな岐路に立たされ悩み、選択していく。本作はそういった人間ドラマを作者様の温かい視点で余すことなく見せてくれます。
毎日配信なので習慣的に読ませていただき、さ、自分も人生をがんばろう!てなってます(^^)/
素晴らしい、というより凄まじいです。
興奮と感動、そして程よい刺激と大きな期待感が堪りません。
登場人物たちが個性的……などと月並みな表現では表しきれません。
物語の中に現れるキャラクター達は皆一様ではなく、それぞれ違った性格や考え方があり、持病や生育環境など置かれている状況も様々。
まったく違った魅力と背景を持つ彼女らを、まるで隣で見て来たかのように描いておられます。
仕事も年齢も性別も当然と一人一人違う。
なのにそれを取り巻く人間関係や専門的な知識の奥深さ。
正直、脱帽です。
そうして練り込まれた個性が、読者の心を強く震わせ惹きつけているのでしょう。
仕事や生活に悩み苦しみ、迷い成長する彼女らに生き様を教えてもらいながら、「今日も一日頑張ろう」と毎朝元気を貰っています。