一人一人の人生が折り重なり紡がれていく、温かい現代ドラマ

連作小説の第三部に当たり、簡潔にまとめられたこれまでの「あらすじ」を読むことで一層物語を楽しむことができると思います。

家具職人の正人さんと、高校生の頃その仕事に影響を受けたスペースデザイナーの美葉さん。これまでの想いが結ばれて、再会を果たすところから物語は始まります。

丁寧に描かれたその描写はまるで情景を映像で見ているように写り、直接の心情だけでなくその動作からも、二人の純真な心が伝わってきます。初めからクライマックスを観ているように惹きつけられました。
そして揃った同級生……一人一人にそれぞれの人生がある、「設定」や「登場人物」では片付けられない生身の人生の重なりを、この小説で感じることができます。

現実もそうであるように、「恋愛」の成就は一つの関係性の変化に過ぎず、それがゴールではありません。絶えず変化していく人々の関係性が折り重なり、紡がれていく――そんな「現代ドラマ」を見守りたい方に、是非おすすめします。

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