後書き

 2022年8月12日から連載を始めた「あの娘が空を見上げる理由―赦し―」は2023年3月4日の本日をもって無事最終回を迎えることが出来ました。半年余りの長い連載となりましたが、お付き合いくださってありがとうございました。


 北海道の当別町という小さな町を舞台にした物語「あの娘が空を見上げる理由」シリーズの第三部となる本作は、登場人物達の内面を掘り下げる内容となりました。


 どんな人でも善と悪、長所と短所を持ち合わせているものです。そして色んな自分のとバランスを取りながら生きていくのが最良の生き方なのだと思います。短所ばかりをクローズアップしてしまうと苦しくなるし、長所ばかり見ているとそこから成長できなくなります。ですが、そんなこんなな自分を丸っと受け入れるのは至難の業です。


 序盤で安弘が「一人の力では生きてはいけない。人を助け、自分も困ったときには人に頼る。それが出来れば、何とかなるさ。」と言いました。「赦し」で言いたかった事はこの一言につきるのですが、中々難しい事なんだろうとも思います。案外「困ったときに人に頼る」という事ができない人が多いのでは無いかと思うのです。人に助けを求めるのであれば、困っている自分、つまり「駄目な自分」を晒さなければならない訳です。自分の短所をある程度受け入れ許容していなければ人に手を伸ばせないのです。正人はまさに「人に頼れない人」でした。

 

 思春期から始まる自分探しの旅に、正人はまだ船出をしていなかったからです。親との分離が出来ていない正人は、両親の不幸を自分が再現してしまうと思い込み、美葉を巻き込まないようにと別れを告げてしまいます。そこで美葉から「樹々を続けて欲しい」と頼まれます。美葉にそんな意図はなかったのですが、樹々を続けるためには一人の人として自立して生きなければならず、正人はやっと自分の特性と向き合いコントロールするチャレンジを始めたのでした。


 そんな正人を温かく見守り、手を伸ばさないなら強引に掴んで引っ張り天岩戸から連れ出してくれた仲間達。みんなそれぞれ色々な事を乗り越えました。


 美葉と正人は生きていくためにお互いが必要なのだと気付き結ばれましたし、正人を頼ってやって来たアキと猛も健太と出会い家族になる約束をしました。佳音はトラウマを乗り越えて出産したし、陽汰も新たな仲間を見付けてのえるともいい感じになりました。


 雑にまとめてしまいましたが、大団円と言って良い結末です。


 でも一つ、書き残したことがありました。

 冒頭で登場した「命の町」です。


 大団円で止めておけばいいのかも知れませんが、「命の町」という言葉を保志が出してしまったので、書かねばなりません。


 次回は、もう美葉と正人が恋愛関係でゴタゴタすることはありません。なので涼真はもう出てこないはず。火種になるのは、桃花ちゃんともろもろです。


 最後になりましたが、最後まで一緒に空を見上げてくださり、ありがとうございました。


*もしお時間があれば前作もお読み頂けると嬉しいです。

・あの娘が空を見上げる理由―憧憬―

https://kakuyomu.jp/works/16816700427307638781/episodes/16816700427307683872

・あの娘が空を見上げる理由―結―

https://kakuyomu.jp/works/16816700429551266387/episodes/16816700429551327306


 


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あの娘が空を見上げる理由ー第三章 赦しー 堀井菖蒲 @holyayame

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