望月という美貌の「少年」と、由利という異形の少年の出会いが、戦国時代の海を変える。そして、歴史上には「真田幸村」としての名はない青年、真田源次郎と共に、時代そのものを変えていく。
望月は自分を殺そうとする権力者に仕えていた。この主に犯され、狂った望月の妹。それを助けられなかった自分を望月は想い、主には逆らえなかった。例え自分の性別が分かる個所を抉り取られてても、どんな理不尽な命令をされても、望月は主の言うままに実行した。そんな望月の前に、由利という異形の少年が現れる。望月に惚れこみ、共に海に出ようと誘う。しかし残酷な主は、望月に由利を見張るように命じ、死なぬように生かせと、命じた。そこから地獄の日々が始まった。由利は殺される寸前まで暴力に晒され、望月が介抱して回復すると、また暴力に晒されるという、繰り返しだった。しかし、このやり取りで、望月に変化が訪れる。
由利が言うように、自由になってもいいのか――?
しかし、そんな希望の光を掻き消すように、銃口が向けられた。
果たして、それは……。
船とその船乗りたちが、戦国時代に豪快な風穴を開ける!
戦国時代と言えば地上戦がメインに描かれますが、この作品は船が舞台。
これからどう歴史が動いていくのか、必見です。
是非、御一読下さい。
まず特筆すべきは戯曲のようなリズム感あふれる文体。
なんだか河竹黙阿弥の台本のようだ! と惹かれた。
正確には、浄瑠璃ではなく謡のようなのかもしれないし、はたまた講談のようかも・・・
とにかく魅力的な文体で、斬ったはったのシーンはまさに歌舞伎の荒事。
一方で静謐なシーンの美しさといったら!
中性的な美青年の描写が素晴らしく、何度も読み返して先に進めません!
時代は戦国。世は大航海時代。
海賊と呼ばれる武装商船団と戦国武将たちのかかわりが描かれる歴史浪漫が繰り広げられます。
若き勇士たちは、まるで江戸末期の開国派のように世界に夢を羽ばたかせる。
戦国物が好きな人だけじゃなく、海やキャラック船にロマンを感じる人にもおすすめしたい。
カクヨムの愛され小説のひとつ。
真田十勇士を借りた本歌取り。人物をそのまま生かして使っているが、テーマも舞台も違う。奥行き感が出るが、本歌好きには違和感も出してしまうだろう。
文体も斬新。確かに講談本のような印象。体言止めを多用するのは、古い歴史ものではよくある方法で、これが講談のようなリズムを産む。これが好きな人もいれば、苦手な人もいる。
しかし、改行も、会話括弧も、割と色々な部分が従来の小説作法にはないものであり、これも相当、読者を選ぶ。
緩急をうまく使った物語の流れそのものは上手で、波のような印象。真似したくなる。
更にはページをキャンバスのように、文字を絵の具のように使って、物語を形のように描写していくあたり、大変斬新で、こんな方法をどこで思いついたのか、才能に嫉妬すら感じる。自由度が高い。
だが、これら従来手法ではないものを選択するというのは諸刃の剣。
これほど読者を選ぶ条件を持ち合わせながら、既に多くのファンが、この物語を追いかけているというのは、奇跡。懐の深い読者層に支えられている作品。
いくつか存在するカクヨムの愛され小説のひとつ。今後が楽しみです。
【面白かった点】
まあ何と言っても読みづらい作品です。でも、声に出して読み、滑舌良く、釈台に座した演者のように吟いあげていると――あら不思議。いつの間にか癖になっています。私はそこまでに四話かかりました。以降は他の作品の文章が物足りなく感じます。
【良かった点】
十勇士の望月というと、真田忍者の一人、影武者とも、留守役とも、あるいは爆弾作りの名人とも知られるキャラですが、それが何と女性と見紛う海賊の頭。こんな十勇士あってたまるか。いや、ここにあった。てなわけで、どんな異説になるのか楽しみです。
【期待している点】
筧や穴山がどんなふうになるのか楽しみですし、悲劇の講談が史実とどうリンクしていくのかも興味があります。
陸の孤島――列島の戦国が終焉を迎える頃、その島々を囲う海は、どうなっていたのか。あるいは、どんなものだろうと、想像してみると――そこには帆船の海賊団が。
「和」の列島とちがい、「洋」の海からの「におい」を感じる、そんな帆船の海賊団。
頭目や乗組員も、一癖も二癖もあり、そこへ――
真田源次郎と仲間たちという、さらなる「曲者」を混ぜたら、どんな化学反応が起こるのだろうか。
きっと、儚くも力強く、醜くも美しく――そういう、誰も見たことのない、豪華絢爛な絵巻が見られることでしょう。
サア、船出だ。
あなたも――源次郎と、仲間たちと共に、万里の波濤へ漕ぎ出してみませんか?
まず、私は歴史小説を読んだことはありません。その前提をご理解の上このレビューを読んでいただきたい。
非常に勉強されたのだなと一目でわかる作品だと感じました。船の形や寸法、現代に生きる私には馴染のないものが、さも当然のように出てくる。これは読みにくさにも繋がりかねませんが、キャラクターが生き生きと動くので閉塞感を感じませんでした。
そんなものよりも、もっとこの時代の事を勉強しておけばよかったと後悔が頭をよぎりました。歴史に詳しくもなく、ライトノベルに親しんだ私にはこの小説の魅力の3割も理解できていない実感があります。それでも、時代の空気を感じられる作品です。
時代の空気を感じるのは、非常に細かな風景描写のおかげだと私は感じます。先ほど挙げた船の形などもそうですが、キャラクターのしゃべり方一つとっても今とは違うものを感じます。
私などは風景描写を出来るだけ排除した文章を書いてるので余計に思ってしまうのですが。綺麗な風景描写というのは綺麗です。
総じていい作品です。もっと歴史について造詣の深い方なら、歴史について知っている分だけ楽しめる作品だと感じました。