独創性の高い作品

カクヨムの愛され小説のひとつ。

真田十勇士を借りた本歌取り。人物をそのまま生かして使っているが、テーマも舞台も違う。奥行き感が出るが、本歌好きには違和感も出してしまうだろう。

文体も斬新。確かに講談本のような印象。体言止めを多用するのは、古い歴史ものではよくある方法で、これが講談のようなリズムを産む。これが好きな人もいれば、苦手な人もいる。

しかし、改行も、会話括弧も、割と色々な部分が従来の小説作法にはないものであり、これも相当、読者を選ぶ。

緩急をうまく使った物語の流れそのものは上手で、波のような印象。真似したくなる。

更にはページをキャンバスのように、文字を絵の具のように使って、物語を形のように描写していくあたり、大変斬新で、こんな方法をどこで思いついたのか、才能に嫉妬すら感じる。自由度が高い。

だが、これら従来手法ではないものを選択するというのは諸刃の剣。

これほど読者を選ぶ条件を持ち合わせながら、既に多くのファンが、この物語を追いかけているというのは、奇跡。懐の深い読者層に支えられている作品。

いくつか存在するカクヨムの愛され小説のひとつ。今後が楽しみです。

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