第5話 ゲームって楽しいよな
『おいっす、皆お待たせStylish Buddhaだ』
配信開始の時間になると、ゲームの画面と一緒にヘッドホンを着けたお兄ちゃんが私のタブレットに映し出された。
「すごい! 小さいりとがいる!」
りのちゃんは興奮した様子でタブレットに映っているお兄ちゃんを指さした。
「今お兄ちゃんは世界中にこの映像を配信してるんだよー」
私が説明をしてあげるとすぐに意味を理解したのか、続けて喋り始めた。
「世界中って事は⋯⋯これがインターネット?」
「あっ、インターネットは分かるんだ」
「妹が学校で使ってた教科書って言うやつをいない間にこっそり読んで勉強した!」
「な、なるほど⋯⋯」
テンションが高いままそう教えてくれるりのちゃんだったけど、話が重いせいか、りのちゃんほど私のテンションは上がらない。
「あっ、お兄ちゃんのAIM調整が始まるみたいだね」
そんな事を話しているとお兄ちゃんの配信が本格的に始まった。
♢
「んじゃ、今日は大会前にAIM調整をして、お昼食べたら会場入りしてって感じで行くからよろしくなー」
:スタブさんのガチ調整参考にさせてもらいます!
:今回の大会ももくおじでいくの?
:メイン武器は何にするんだろ?
:まぁ武器に関しては運ゲーでもあるし全部満遍なくやるんじゃない?
:今回は優勝出来ると良いですね!
「おー、応援のコメントとかありがとなー
今回は多分パイロットで行くと思うかな」
:あー、パイロットか
:確かに今の環境めっちゃ強いもんね
:俺も使ってる!
:あとは他のメンバーとの絡み次第?
「一応今回は俺がパイロット、んでメンバーがドムおじ、ハッカー、マケ姉の誰かを使おうかって話だな」
:ドムおじは欲しいよね実際
:ハッカーとマケ姉は迷う
:難しいとこやな
:物資考えるとマケ姉一択だけども⋯⋯
「ま、そこはチームメイトに任せて自分は自分に出来る事をやるだけだな」
:チームメイトをそこまで信用出来るの凄い
:野良とかだと味方信用出来ないからそこまで味方信頼出来るの凄いなぁ
:今回は参加メンバーも強いし確かに信頼出来そう
「今回はいつものハンデ有りの試合じゃなくてガチの大会だからなー」
:優勝賞金いくらだっけ?
:相当デカい大会なのは知ってるけど詳細わかんないんだよね
:賞金1億とかじゃないっけ?
「優勝賞金は1億だな、チームメイト3人で3000万ずつ分けて、チーム自体の活動費とかで端数の1000万はチームに入れることになるけど、十分すぎる賞金だと思うぞ。
ちなみに3位までは賞金が出るから上位に入る事だけは考えておかないとな」
:凄い金額だなぁ
:VPEX自体の人気も凄いけど大会以外だとチーター多いの何とかして欲しいなぁ
「チーター対策で大会本戦は完全にオフラインだからこっちとしてはチーターは関係無いけど、予選でかなり辛い思いしたチームあるし、そこはどうにかしてあげて欲しいよな」
:シャイシスがそのせいで1回戦で負けたんだっけ?
:シャイシス惜しかったよなあれ
:チーター殺して即漁夫は流石に可哀想すぎ
「チーターいた試合はやり直しするべきって意見も多いけど、実際それすると永遠に試合終わらなくなる可能性あるから辛いんだよな」
:とりあえずチーターは害悪って事でFA
:それな
:本当それなんよな
「んじゃ、お喋りはこれくらいにしてとりあえずAIM調整してくぞー
今日は同じチーム所属の台湾ティー君に来てもらってる⋯⋯けど本人は声出せないらしいから単純な撃ち合いの練習をやる感じになると思う」
台湾ティー:スタブさんよろしくお願いします
「こちらこそよろしくなー」
台湾ティー:優勝したら高級焼肉っすよね?
:草
:要求が地味に高いw
「ま、優勝したらな?」
台湾ティー:これはゴチになります!
:もう勝った気でいるの草
:気が早いw
「んじゃ、よろしく頼むぞー」
そして俺は演習場に入り、台湾ティー君と一緒に撃ち合いの練習を始めた。
♢
「何やってるかよくわかんないけど、カッコいい!」
「いやー本当お兄ちゃんのキャラコン頭おかしいよ⋯⋯」
「きゃらこん?」
「この動きあるでしょ? これって練習したりしないと上手く出来ないんだけど、お兄ちゃんはその練習が必要なテクニックほぼ全てを自然に使えるようになるまで練習してるんだよね」
「つまり、りとは凄い?」
「うん、すっごく凄い」
AIM練習だけでも凄いと思っていた私達だったけど、今度はランクマッチで実際の動きの練習をすると言い始め、同じ試合に出るチームメンバーの二人と一緒にお兄ちゃんはランクへと潜り始めた。
「ね、ねぇ、りあ」
「どうかした?」
「りと、おかしい! 強すぎる!」
ゲーム内で無双するお兄ちゃん達を見て明らかに強いと言うのが分かったらしい。
パッと見ただけでお兄ちゃんの強さに気が付くとは⋯⋯りのちゃんにも才能があるのでは?? と言いたかったけれど、お兄ちゃんがどれだけ凄いかをまずは教えてあげないと。
「だってお兄ちゃんはプロなんだよ!」
「プロ?」
「このゲームやってお兄ちゃんはご飯食べてるんだよ? そりゃ凄いよ!」
「ゲームでご飯⋯⋯? よくわかんない⋯⋯」
「まずゲームは分かる?」
「わかんない」
「ゲームって言うのはね、今お兄ちゃんがやってたやつみたいな物全般を指す言葉なんだけど、とにかく沢山あるんだよ」
「ゲームって何をするものなの?」
「ゲームは、遊ぶ為の物だよ」
「遊ぶ⋯⋯?」
「りのちゃんは遊んだことない?」
「ない、と思う⋯⋯」
「そっか⋯⋯じゃあさ、私とやってみる?」
「良いの?」
「もちろんだよ! ただお兄ちゃんがやってたゲームは難しいと思うから、まずはかんたんなやつからやってみよっか」
「うん! りあ、ありがとう!」
「どういたしまして!
それじゃ、お兄ちゃんが来るまで一緒に遊ぼっか!」
私はりのちゃんと一緒になってゲームを遊ぶ事にした。
そして、私はこっそりとゲームをやっているところを録音してみる事にした。
♢
「ふぅ⋯⋯んじゃちょっと休憩してから現地行くわ」
『おう、遅刻すんなよー』
『寝るなよ?』
「寝ないっつーの! 昔やったやついるから寝るのがどれだけリスキーかくらい分かっとるわ!」
『ハハ、だよな』
『んじゃ、俺もそろそろ移動しないとやばいから落ちるわ、んじゃ現地で』
「『おつかれー』」
メンバーとの練習を終えた俺はまず昼飯を食べる為にリビングへ向かう。
そしてリビングに入るとそこには一緒になってゲームで遊ぶ莉愛とりのがいた。
「むぅ⋯⋯難しい⋯⋯」
「いやいや! りのちゃんかなりセンス良いよ!? 私負けそうなんだけど!?」
画面を見るに、おそらくファミリー向けのミニゲームが沢山収録されているヒゲオパーティを遊んでいるのだろう。
「ぐぬぬぬぬぬ!!!!」
「連打なら負けない⋯⋯!」
連打が勝負の決め手になるミニゲームのようで、りのが相当な速さでボタンを連打している。
⋯⋯本当に初心者だよ、な?
「ぬわああああああ!まけたああああああ!」
「やっと、勝てた!」
勝負の余韻に浸っていてまだ俺に気付いていないようだが、時間に余裕も無いしそろそろ声をかけないとな。
「おーい、二人とも飯はどうする?」
「「たべるー!!」」
「喋り方が幼児化してんぞオイ」
「「はっ!?」」
ま、それだけ楽しんでくれたのなら置いてて良かったな。
家出少女を拾ったのでVTuberやらせてみた 二兎凛 @nitorin
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