第4話 名前を決めた⋯⋯だと?
夜飯も食べ終わり、莉奈に風呂の使い方なんかを教えてあげるように伝えた俺は、珍しく色々と動いていたこともあって、非常に疲れていた。
「あー、あの件だけ、あいつに連絡しないとな⋯⋯」
俺の友人に、彼女に関連する情報を送り、どう対応するのが良いかを聞く為にメッセージを送ると、眠気が限界に来たのか眠ってしまった。
「ん⋯⋯うるさいな⋯⋯」
俺のスマホから通知音が鳴り響き、着信が来ているようだった。
「もしもし、理斗です」
『おっ、やっと通じたか。
さっきメール見たぞ、なんかまた変な事に首突っ込んでんなお前』
「あぁ、サトちゃんか⋯⋯すまん少し寝てたっぽい」
『あー、起こしたか。 すまん』
「いや大丈夫。 んで俺とりあえずその子の事を保護したんだけど、どうすれば良いと思う?」
『とりあえず、俺から言えるのはそう言う無戸籍の人向けの支援団体があるからそこを当たる事をおすすめするかな。 最速で数週間で戸籍を取得出来たって実例もあるらしいから問題は無いと思う。 あとは、生まれた産婦人科とかが分かれば、出生証明書とかが残ってるパターンもあるから、実家がわかるなら、俺達みたいなのが出張って行くのも手ではあるが⋯⋯』
「最悪あの子だけの戸籍とかは作れたりしないのか?」
『就籍っていうのはある。 どちらにせよ支援団体に行くのが無難だろうな』
「分かった。 探して連れて行ってみる」
『それが良いさ』
「急に悪かったな、変な話して」
『構わないさ、今度また飯でも行こうぜ』
「だな、お礼に奢るよ」
『マジか、期待せずに待ってるわ』
「そこは期待してて欲しいんだけどな」
『冗談だよ! んじゃまた何かあったら連絡くれよ』
「あぁ、ありがとう」
無戸籍の支援団体の存在を教えて貰った俺は、あの子にそれを明日教えてあげる事にした。
♢
「ねぇねぇ、結局名前はどうするの?」
「名前⋯⋯私に、名前⋯⋯」
必死に考えているようだけれど、全く思い浮かばない様子の彼女を見て、流石に急には難しいかなと思った。
「どうせなら⋯⋯リトと莉愛みたいな名前が良い⋯⋯」
「⋯⋯もう、本当に可愛いなぁ!」
「ふぇっ!?」
もじもじとしながらそう言うこの子を見て素直に可愛いと思った私は思わず抱きついてしまった。
歳としては私の方が1歳だけ上とは言え、妹がいた事のない私にとって初めて出来た妹のように感じた。
特にこの子の今までの境遇のせいで、同情している部分が無いとは言えない。
でも、この子は良い意味でも悪い意味でも純粋なんだと思う。
この子はお兄ちゃんが保護するって言ったけど、正解だと私は思う。
直感に優れているみたいだけど、悪い人に騙されて酷い目に遭わされる可能性だってある。
本当に戸籍が無いなら助けも求められない。
「(私が、私達が
その為にはやっぱり家で、ここで出来るお仕事探す事からだよね⋯⋯
お兄ちゃんにやっぱ相談しないとだね。
「それなら、私達に似た名前考えてみようよ!」
「似た名前⋯⋯?」
「私がりあ、お兄ちゃんがりと、だからりを使った名前を考えるの!二文字だったら尚更そっくりだし!」
「りい、りう、りえ、りお⋯⋯何か違う⋯⋯」
五十音全部口にするつもりなのか声に出して響きを確認しているようだった。
「りな、りに、りぬ、りね、りの⋯⋯りの、りの!りのがいい!」
「りの、確かに響きが可愛い!」
「わたし、りの!」
「うん、じゃあ明日お兄ちゃんに言おっか!」
「うん!」
こんな簡単に決めても良いのかな?とは思ったけど、気に入ってるみたいだし、いっか。
♢
朝になると、皆が起きて来た。
「おはよう」
「リト、莉愛、おはよう!」
「二人ともおはようーねむい⋯⋯」
こうやって起きたら誰かがいるって言うのはなんだか久々で、少し新鮮な気分だ。
「リト、聞いて欲しい事があるの」
「ん? 聞いて欲しい事?」
「そう! わたし、名前決めた!」
「えっ? もう?」
「わたし、りの!」
「りのか、うん、似合ってると思うぞ」
喜び様を見ているとほっこりとしてしまい思わず頭を撫でてしまった。
「えへへ⋯⋯」
頭を撫でると、嬉しそうな声を出してこちらに身体を預けてくる。
「「(なんだこの可愛い生き物)」」
精神的にまだ幼いと言うのもあるのか、今まで甘えられる人がいなかったからなのか、こうやって自然に甘えられると嫌とは言えない。
思う存分甘やかしたくなるのは俺だけだろうか。
「ん! とりあえず、今日は俺は予定があるんだ。 だから、莉愛、少しりのの事頼んでも良いか?」
「そっか、今日日曜日だっけ」
「配信、休むわけにもいかないしな」
「じゃありのりゃんと一緒にお兄ちゃんの配信でも見ようかな?」
「配信⋯⋯って何?」
「ま、それも含めて莉愛説明してあげてくれ」
「任された!」
「AIM調整とかもあるから、1時間後には配信始めるから、今のうちにシャワーとか浴びてくる」
「行ってらっしゃーい」
そして俺は俺の“仕事”をする為に準備を始めた。
支援団体とかについてはお昼ご飯の時にでも言えば良いだろう⋯⋯多分。
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