異世界=ナーロッパを覆す

 情景描画が大変丁寧で美しい「中華風ファンタジー」作品です。

 最近の異世界ファンタジーは、背景描画の手間を省くために世界観=中世ヨーロッパで固定した作品が非常に多いです。
 読者としては共通化されたテンプレートのお陰で世界観にすんなりと入り込める利点があるのですが、それは逆にいうとその世界の風景やそこに住む人々の生活を想像する愉しみが無いとも言えます。「はいはい、お城があって、煉瓦造りの建物で、騎士とか馬とかが居るんでしょ」と。

 そんな思考停止状態で本作を読むと非常に新鮮に感じると思います。
 洋服、建物、役職、そして色にわたるまで、全てが新鮮であり、その都度『それってどんな景色かな』と想像させてくれる愉しさに溢れています。これこそが本来ファンタジー小説の醍醐味ではないですしょうか?

 そんな美しい世界の中で繰り広げられる、甘々でありつつも重厚なロマンス・ミステリー。
 皆さんもまだ見ぬ世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか!

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