春雷駆けるアゴニ―

とある精神科を経営する文原　剛（ふみはら　つよし）は最低な精神科医である。精神患者を異常者と揶揄し、仕事をするのも金のためだけで、そこには本来いるべき精神科医など存在していなかった。
ある夏の日、そんな彼のもとに城月　華（じょうつき　はる）という患者が診察を受けに来た。不適切な診察、人としての礼儀すらなっていない彼に彼女は怒りをあらわにするが、彼が謝ることはなかった。
その晩、二人はまたその診察室で出会った。望まない再開に彼は彼女を追い出そうとするが、彼女の投じた一言が彼の『心』を動かす。

彼は本当に最低な精神科医なのだろうか。
それとも、彼もまた一人の異常者なのだろうか……

精神科医とその患者が紡ぐ物語に、果たして幸せは存在するだろうか。