第十話 残されたメモ

翌日、二人は朝食を食べた後、アイリスの提案で昨日の図書館にもう一度行ってみることにした。図書館に着くなり早速本を読み始める。


───ふむふむ。これは面白いわね。


リリーネは本を読むのが好きだった。昔から祖母に本を読んでもらってる時が一番楽しい時間だった。そして今は大好きな親友と一緒にいる。それがとても嬉しかった。


「リリーネさん、ここなんて読むんですか?」


「それは……」


二人は楽しそうに本を読んだ。時間はあっという間に流れ、昼を過ぎた頃。リリーネは本を戻しに席を立っていた。


───もうお昼頃ね。そろそろ昼食にしようかしら。


そう思い、席に戻るとアイリスの姿がなかった。急いで館内を探し回ったが見当たらなかった。


───アイリス……どこに行ったのかしら……


もう一度席に戻ってくると一枚の紙が置いてあった。それにはこう書かれていた。


”貴方様のご友人はこちらで保護させていただくこととなりました。

突然のことに困惑されてしまうと思いますが何卒ご了承ください。ここまで保護していただき、誠に感謝申し上げます。


ご不明な点がございましたらウィンドル国立科学研究所までお越しください”


「なによ……これ……!?」


怒りで手が震える。だが直ぐに冷静になり考える。


───だめよ…落ち着きなさい……この前の二の舞は避けなければ……まずは状況を整理しましょう。アイリスは誘拐された。目的は一体何? もしかして宿の女となにか関係が……?

とにかくこの研究所に行ってみるしかないわ


リリーネはメモ用紙をポケットに入れ、図書館を出た。王都の中心から離れた場所に位置する巨大な建物。そこが国立科学研究所だ。受付の女性に事情を説明すると、困惑している状況だった。


「はぁ!? どういうことよ! 」


「申し訳ございません。此方では外部の方を当研究所にお招きした記録が確認出来ませんでした。」


「そんなはないはずよ! このメモにだって!」

「申し訳ございません」


「そんなっ!!」


リリーネは至って冷静のはずだった。リリーネの顔は怒りで染っていた。一度は冷静になれたが時間が経つにつれて、不安と焦りが出てくる。


「もう一度調べなさいよ!!」


机に拳を叩きつけ、受付を睨みつけた。すると受付の奥から白衣を来た一人の老人が騒ぎに気づき出てた。


「何事かね?」


「あ、ウィンドル所長」


その老人は所長と呼ばれていた。受付が事情を説明した。しばらく考え込みようやく口を開いた。


「君、メモを見せてくれるかな?」


「えぇ……」


老人は眉間に皺を寄せ考え込むがすぐに話し始めた。


「もしかするとメアリー君かもしれん」


「え……そんな……メアリー博士が人を呼ぶことなんてあるのでしょうか?」


「うむ……最近わしも彼女がなんの研究をしているかさっぱりなんじゃ。しかし最近何やらやけに楽しそうにしておるし、古い付き合いの軍人のような人物とよくおるのを見かける。仮説でしかないんじゃが一度メアリー君の所を訪ねるとしよう。無論わしも同行する」


そういうと研究所の奥の方に案内された。長い廊下の途中で老人は話し始めた。


彼の名前はウィンドル=ハイド。彼の祖父、ウィンドル=マクリーは偉大であった。この研究所の最初の所長であり創設者であった。祖父は様々な発明をし、この国の発展に大きく関わった人物であった。その後祖父が死去した後に父が継いだ。父も同じく偉大であった。だがある日突然失踪してしまったのだ。それ以来、彼の姿を見たものは誰もいないらしい。そして父の跡を継いで所長をしているそうだ。


だが彼は祖父や父の様な天才ではなかった。そして同時に天才的な少女がこの国で産まれた。それがメアリー=モーションである。


彼女は幼い頃からこの国の軍事力、経済を大きく変えるほどの発明をしていた。そして彼女はその功績を認められて僅か十四歳という若さで博士号を授与された。そんな彼女も今年で二十四歳になるらしい。


だが彼女の性格は傲慢で冷徹だった。自分の才能に絶対的な自信を持っており、自分が他人より優れていると思っている。それ故に他者への興味関心がない様に見える。


更に他人からの評価にも興味がなく、常に上から目線なのだとか。そしてこの世界では研究者は長い年月をかけ学び研究するが故に研究者は基本的に高齢者ばかりな為その性格を良しとする者はいなかった。


だが彼女の実態を知らない者は、その美貌とカリスマ性、数々の偉大な功績に憧れや尊敬する者も多く存在し、メアリーの研究室は大勢の人が所属しており、大学の講義も講義室に入り切らない程の人気ぶりだったそうだ。


「何やらメアリー君が迷惑をかけているようですまないねぇ……」


「……」


「彼女は昔から研究熱心でね、研究で言えばわしの何倍もこの国に貢献しとる。じゃがぁ…特にここ数年はそれに拍車がかかってのう…まるで何かに取り憑かれたように研究室に篭っておる。

わしはメアリー君を幼い頃から見てきているが、いつも何をしておるのかさっぱりなんじゃ。何か良からぬ事をしてしまわないか心配じゃ……」


「もし、そうなった時は私が止めるわ。」


「君がかね……? そうか……頼んじゃぞ……」


老人は少しほっとした様な顔で微笑んだ。そして一つの扉の前で止まった。その扉は厳重に鍵がかかっており、五つの決められた数字に合わせ鍵を刺し回す。メアリーが自作したものらしい。

扉を開けると少ししたところにまた扉があった。こちらは内側から鍵が掛けられる物のようだ。


「メアリー君。居るかね? わしじゃよ」


「あら、貴方が訪ねてくるなんて珍しいわね。何事かしら?」


扉の向こうからは可憐さと妖艶さを感じる声が聞こえた。


「いや、大したことではない。メアリー君に来客が来たのでその案内じゃ」


「来客……? そう……入りなさい」


返事を聞き、扉を開けると薄暗い部屋の中に一人の女性が椅子に座っていた。女性はこちらに振り向くことなく、机に向かい何かを調べている様子だった。


「こちらがお客人の……」


「リリーネよ」


ウィンドル言葉を遮るように名乗った。アイリスを攫った張本人を目の前にし、気持ちが早まり冷静で居られなかった。



~後書き~


読んでいただきありがとうございます。榊ナギです。


なんともキリの悪い所で切ってしまって申し訳ないです。ほんと一節全部バーっと書いて後から一話一話に切っているのでどうしても違和感が出てしまうんですよね。

だから最初は一節ずつ投稿しようとしていたのですが、それはそれで読者のハードルが上がってしまうなと思ったのです。キリが悪いなら投稿頻度を上げれば!っと問題が山積みになってしまったので諦めました。時には諦めも肝心だ。


そして今週から他のサイトでもこの他愛のない後書きを書いていくことにしました。

理由としては、この後書きで今後ちょっとしたアフターストーリーやアナザーストーリーを投稿しようと計画しています。

というのもですね、私は文章を書く天才ではないで寧ろ書くのが超下手なのでスランプのような時期が来てしまうんですよね。それで本編が書けないってなってるときに「これ書きたいけどちょっと前の話だしな」とか「これ書きたいけど本編に入れるのはどうなんだろう?」みたいな書きたいな書けばよかったなと思ってる部分をいっそ書いてしまおうというわけです。


物語を書いているとより一層解釈が深まるので、元ある設定に加えたり活かしたりとねまぁ色々やってて楽しいのでそうしようという訳です。適当そうに見えまずが結構色々面白いことを考えて作品を作っています。辻褄が合わない展開を嫌っているのでそこらへんはしっかり考えています。


というわけ来週もお楽しみに!榊ナギでした!

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