恋をしたい公爵令嬢は、愛で育まれる

 今作の最大の魅力は、何をおいても薔薇魔女ことレオナがかわいい事だろう。
公爵令嬢として家族からの愛を一身に受けて育った。その結果は気高く、美しく、賢く、優しい非の打ち所がない令嬢となった。
が、彼女の魅力はこんな記号的な言葉で説明できるものではない。所作の一つ一つが思考の過程が全て可愛いで形作られている。彼女の魅力は読めば間違いなく伝わる。そして読んだら最後、虜になる。間違いなく、今年最推し。いや、未来も含めて最推しの令嬢だろう。

 そんな彼女を着飾るドレスにも作者のこだわりとセンスが溢れ出している。ドレスを1着書き上げるのにどれほどの労力がいるだろうか。アクセサリー、色、生地、どのような場にどんな立場の人間が着ていくのか。実際にドレスを作るのと同じレベルで細部に至るまで考え抜かれている。そんな素敵なドレスがいっぱい出てくるのである。
 かわいい令嬢が素敵なドレスを身に纏う。もう、心が踊りぱなしである。

 ヒロインを取り巻く男性陣も皆、仕事と気遣いができる騎士であり、紳士なのだ。彼らに欠点があるとすれば、レオナのために非公式にドラゴンを討伐してしまう所だろうか。  
 彼らには一応引き立て役として無能系上司がいるのだが、まあ、ゴリラとゴリラと残念王子なので、引き立て役にすらなれていない悲しさがある。それでも読者の記憶にこびり付くしつこさがゴリラ達の長所だろうか。

 文章は、澱みなく紡がれておりスラスラとストレスフリーに読むことができる。心理描写として時折挟まれるレオナのツッコミもテンポよく、緩急をつけるのに一役買っている。

 恋をしたい令嬢レオナは、過保護な男性陣の許しを得られるほどの相手を見つけられるのか。
 是非、レオナの可愛さを知ってください。

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