人間を大地に繋ぎとめる鎖

大干魃の年には雨乞いの儀式が行われる。一人が生贄に差し出され、三人の僧侶が熱心に跪拝すると、その身体はふわりと宙に浮き上がり、空の彼方へと舞い上がる。
その様子を目撃した主人公は渇望した。自らも、旅の空を経験してみたいと。
そして、二度目の大干魃が訪れる……。

人間が根源的に抱く浮遊願望をモチーフにした本作。逆説的に、人間と大地との間にある残酷なまでの絆の深さを抉り出す。主人公が、自らの想いを遂げるかどうかはその目で見届けていただきたい。ただひとつ付言したいのは、彼が紛うことなき善人であり、まさに天国に相応しいはずの存在であるということ。もしかしたら、天から遠く離れたこの地/血にこそ、人間の人間たる証は刻まれているのかもしれない。