第四話
「俺は、
それは、本当に偶然の出逢いだった。
「公子様は?」
「私、は····、」
「捜したぞ! 母上が鬼の形相でお前を捜し回っていたが、今度は一体、なにをしでかしたんだっ!?」
公子は
「
なぜか
「ちょっ、俺はなにもしていないよ!」
「いいからっ黙って謝ってろっ」
そして勢いよく顔を上げ、今度は丁寧に腕を囲って揖する。
「すみません。急ぎの用がありまして! 本当に失礼極まりないのですが、ある意味、命に係わるため、お先に失礼します!」
「
腕を掴んで引きずるように連行するその姿を、呆然と
「これ、君の····、」
「返してくれるの? ありがとう、公子様!」
後ろ向きになって
「ほら、早く! 逃げるか隠れるか謝るか、だ!」
「だから、ホントに俺はなにもしてないんだって! なんで何か起こると全部俺のせいにするんだ、
「知るか! どちらにしてもほとぼりが冷めるまでは隠れてろっ」
ふたりはぎゃあぎゃあと喚きながら、慌ただしく丘から去って行った。
ひとり残された
『
頭の中に直接話しかけてくる桜の化身は、どこか同情したような表情でこちらを見上げてくる。
『あの子供は、不思議な子でして。霊力が安定していないにも関わらず、私の姿が見えるし、声も聞こえるようで。つい嬉しくなって、年甲斐もなく今年も花を咲かせてしまいました』
「私も、少し気になることがある、」
確証はなく、けれども、何かが引っかかる。惹きつけられる。
『気になることと言えば、十数年前に、一瞬だけ
「それは、私も同じだ。その後はなにも感じなかったが、」
それは不変だった悠久の時の中での変化に思えた。この出遭いは希望なのか、それとも。
「
あの少年には似合わない名だと思った。あの舞は本当に見事で、目を奪われた。
その後、
再び出逢った時、
あの時の邂逅は、決して偶然ではなく、出逢うべくして出逢ったのだと。
「やはり、君だったんだな」
愛しいものでも見るような眼差しで、
その意味を知る者は自分以外いない。
遠い昔に交わした約束。誓い。
―――――あの日からずっと、君を待っていた。
〜番外編 桜舞う日、君と〜 了
彩雲華胥 〜起承編〜 柚月なぎ @yuzuki02
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