怪盗と警察。すれ違う正義を抱えた二人の恋は、果たして成就する?

  • ★★★ Excellent!!!

浅雛あかり。小学校教諭かつ怪盗。子供から寂しい時間を奪うことが、彼女の正義。
一ノ瀬雅臣。警察官。法のもとに市民の平和を守ることが、彼の正義。
偶然にもお隣さんになった二人は、少しずつ少しずつ惹かれ合う。
浅雛あかりの正体という、とびっきりの障害を秘密として抱えたまま。

こちらは、前作『白銀の狼』を書き上げた作者・結月花さんが贈る、新しい恋愛物語です。
前作はかなりシリアス色の強い物語だったのに対し、今作はコメディ調を含んだ読み口となっていますが、やはり面白く仕上がっています。
何と言っても花さんのすばらしさは、テンポのよい展開によってもたらされる物語の濃密さ。
今作でもそれは余すところなく発揮されていて、息をつく間もないほどのめり込みながら最後まで読み切ることができます。

先程コメディ調と書きましたが、それでもメインジャンルは恋愛というだけあって、心理描写は大変丁寧であるうえ、展開もしっかりと地に足がついていて、恋愛好きさんにもシリアス好きさんにも大変お勧めできる一作です。
もちろんコメディ好きさんにも楽しんでいただけるかと!

また扱っているテーマも、考え甲斐のあるものです。
夜遅くまで寂しい思いをしている子供を救うために犯す罪は、果たして罪でしょうか。
罪だとしたら、彼女は裁かれるべきなのでしょうか。
YesともNoとも答えがたい問題を前に、つい深く考え込んでしまう……そんな楽しみ方もできてしまいます。

彼女は秘密を守り切ることができるのでしょうか。
二人の間に育まれた恋心は、どうなってしまうのでしょうか。
この先は、ぜひ本編をご覧ください。間違いない名作としてお勧めします。

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