絢爛の裏に残酷が塗り込められた世界にて、痛ましくも煌めく生命たちの物語
- ★★★ Excellent!!!
裕福な都市とスラム街が隣り合い、退廃の翳りを漂わせる世界に、情景を描き出す典麗な文章。けれど綴られているのは、どこまでも痛ましく苦しげで、「生きている」ことを叫び叩きつけてくる登場人物たちの姿。
泣いている、痛い苦しいと顔を歪める、未知を恐れる、血塗られた世界で手を取り合う。嘘偽りや巧妙を盾に護りを固めていなければならず、安々とくつろげる平穏は儚い。そうして生きている生命たちの、生き抜くために覆い隠された内面が見えた瞬間、心が震える。この世界に生きていると、こちらの胸に訴えかけて揺すぶってくる。その目を離せなくなる美しさが、多くの読者の心を、握り潰さんばかりに掴んでいるのではと思います。
ただ、ここで必死に輝いている命たちを見てほしい。傷だらけになりながら、紛れもなく脈打って生きていることを知ってほしい。血が通い温度を保っているのだと、触れたかのように実感してほしい。
読んでみたいと思ったのなら、ぜひ。幕を少しずつ上げていくように明かされるストーリーや世界の姿に引き込まれ、嘘と真に翻弄され。気づいた頃には、奔走し奮闘する生命たちのことが、愛おしくてならなくなるでしょう。