怨霊を退治する氏族の一つに生まれ、齢十二にして凄まじい祓魔の才能を発揮するも疎まれ、死を望まれてきた柊哉。彼を慕う異父弟の楓真や、ひょんなことから知り合い友人となった蓮太の温かさに助けられながら過ごしていた柊哉だが、雲が垂れ込めても保たれていた日々は、七夕の夜に砕けてしまう。
大蛇の力に呑まれたと一族を殺し、楓真に憎悪を植え付け煽り立てた柊哉。兄の背を追って成長した楓真は九年後、潜伏を止め現れた柊哉を再び追うこととなる。かつて、生きて一緒にいてほしいと望んだ兄を殺すべく。
淡くも色鮮やかな情景描写、華やかな戦闘描写、暗さと温かさを描き出す心情描写と、美しい筆致に感嘆する和風ファンタジーです。お互いの生を望みながら、一夜にして殺し合う定めとなった兄弟がいかなる結末を迎えるのか。星のような輝きを宿す二人の生と死、そして「生きてほしい」と願う人々が垣間見せる想いを、ぜひ記憶に刻んでください。