教科書で知ったあの人もドラマになったあの人も、みんな普通にご飯食べてた

 まず、タイトルがいいじゃないですか。
 『語られぬ物語』。
 歴史に名を残したあの人や、知る人ぞ知るあの人の、もしくは名もなき民の、とある日の食事風景が生き生きと綴られた短編集です。
 登場人物の描写や語り口から感じ取れる、当時の息吹。この雰囲気がまた、いいんです。そこにあるのは家族のふれあい、友人たちとの語らい、日々の小さな喜び、悲しみや、葛藤。つまりは、日常。
 歴史の授業で習った大事件の裏側にも、現代の私たちと同じくこまごまとした愛すべき営みがあった。歴史とは教科書で読むだけの切り取られたものではなく、日々の連なりであったのだと改めて感じられます。
 毎回、お題となった料理に関する蘊蓄や歴史などを楽しく学べますし、全話通しての構成も見事です。
 ぜひ、いや絶対に読んでみて欲しい作品です。本当に面白いから!!

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