・アンケート
言葉の本音は見えないが、文字に起こすと本音がルビに出てしまう。
そんな世界のお話。
***
「
そう言って小塚居が差し出したチラシには、こう書いてあった。
『分譲住宅見学会に初めて参加の方でアンケートにお答えいただいた方に、一万円のギフトカードをプレゼント!』
ここはとあるハウスメーカーの営業店舗である。
黒のスカートスーツを着た長い黒髪の女性が、頭を深々と下げて小塚居を出迎えてくれた。
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小塚居は営業担当の星野に案内されてテーブル席に座った。
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営業担当の星野が笑顔で説明しているが、小塚居は視線をほとんどチラシに落としていた。
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意外な返答に、小塚居の視線も自然と正面に向いた。
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なんだか変な空気になって、二人は早々に分譲住宅の見学に移ったのだった。
***
分譲住宅の見学が終わり、店舗に戻って説明もひと通り終わった。
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小塚居はアンケート用紙とペンを受け取って、質問に対する回答を記入した。
【アンケート】
①何がきっかけで弊社を知りましたか?
(
②住宅見学会に参加するのは何回目ですか?(他社含む)
(
③弊社にどのようなサポートを求めていますか?
(
④見学した分譲住宅で良い、または悪いと思った点は何ですか?
(
⑤本日の見学会に参加して住宅を購入したいと感じましたか?
(
⑥要望やご感想などがあればお書きください。
(
アンケートを書き終えた小塚居は、恐縮しながら営業担当の星野に用紙を差し出した。
ルビで本音がダダ漏れになっているが、回答は手書きだからルビを小さくして点にすることはできない。
しかし、意外にも気まずい雰囲気にはならなかった。
営業担当の星野は回答欄に目を通しても笑顔を崩さなかった。
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小塚居は最速でギフトカードに手を伸ばしつつ、申し訳程度に頭を下げた。
「
小塚居は手早く帰り支度をすると、そそくさと店を出た。
営業担当の星野は、退店する小塚居を最後まで笑顔で送り出していた。
***
実はチラシを作成したのは星野留美だった。彼女は元々は広報担当だったが、つい先日、営業担当に異動となったのだった。
ちなみにアンケートのフォーマットは他人が作ったものである。
星野留美はチラシの作成当時、自分が何を考えていたかを思い出すために保存データのフォントサイズを大きくしてみた。
『
星野留美はそっとフォントサイズを戻した。
本音がルビに出る世界 日和崎よしな @ReiwaNoBonpu
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