美術品の消えた世界で、相棒と共に魔力回収

美術品の主題と結び付いた魔力の残滓によって、人々が異常な行動へと駆り立てられる世界。
その魔力を回収するのが、魔力回収機構に所属する回収人。そんな彼らは、彼らは魔力を持って生まれた、稀人と呼ばれる存在でした。

その特異さ故に、悪魔や化物のように見られていた稀人。それは回収人という役目を与えられても完全に払拭されることはありません。

本作の主人公イザヤも、そんな稀人の一人。同じく稀人であるエレミヤと、非常に変わった形でパートナーを組むことになり、二人で魔力を回収していくのですが、魔力を探す過程が実に丁寧。

魔力に取りつかれた人々は、実在したどれかの美術品の主題に沿った異常行動を起こすのですが、もちろん最初からその全てがわかっているわけではありません。
奇妙な事件から、どんな美術品が関わっているか、取りつかれている人は誰なのか、イザヤやエレミヤがそれぞれ考え少しずつ真相に近づいていくところは、謎解き要素満載で、バディものとしての面白さがあります。

そして真相がわかればそれで終わりというわけではなく、関わった人達がどうなっていくのか。そして、それを見たイザヤ達の心に何を残していくのか。
単純なハッピーエンドでは終わらない物語が、イザヤ達と読者の心に問いかけて来るようでした。