「勇者らしくない」と追放された者達が集い、彼らは真の『勇者』となる

粗暴な性格で独りよがりな戦い方をする『暴勇』の勇者は、本来は優秀であるはずの仲間達の素質や使い方を見抜けず、次々と追放してしまう。しかしついには人望を失い自分自身が追放され途方に暮れていると、同じように『勇者失格』の烙印を押された『鬼謀』の勇者や『白骸』の少女勇者と出逢い、彼らは【追放勇者同盟】を結成する――。

あらすじやキャッチコピーの時点で「テンプレな追放モノ作品かな」と思っていましたが、蓋を開けてみれば非常に上質なファンタジーラノベといった内容でした。
勇者と呼ぶには性格や戦法や能力に難のある者達が集い、凸凹パーティに見えつつもそれぞれの長所を生かして短所を補い合いながら、絆を深め人間的に成長していく……というのは実にワクワクする展開だったと思います。「そんなのは勇者じゃない」と周囲から否定され、そこから集った彼らが本当の勇者になっていく姿には感動すら覚えます。

そして設定や展開だけでなく、文章やテンポといった部分でも高品質でした。
簡素かつ必要最低限な描写でありながら、分かりにくかったり雑な部分はなく、サクサクと読み進めることができました。作品全体の起承転結、各章の起承転結、もっと言えば各話の起承転結に至るまで、非常に読みやすいリズムやテンポになっています。
読みやすいだけなく内容も充実しており、個性的なキャラ達のバックボーンもしっかり練られていて、彼らが繰り広げる物語は退屈さがなく目を離せませんでした。
世の中には作品に対して「中身がない」などと批判する人もいますが、今作においてはその『中身』や『内容』は各章ごとに魅力的に詰まっていると感じました。

ただ、序盤ではリズムに乗り出すまでに少しだけ時間がかかるのと、あらすじやタイトルやキャッチコピーが流行りモノに寄せ過ぎているせいで「あーハイハイよくあるテンプレ作品ね」とスルーされてしまっている可能性がある、というのは非常に勿体なかったです。

とはいえ読めば「面白い」と感じること間違いなしです。文句無し星3ですので、より多くの人に読んで欲しいです。めっちゃ面白いですよ!

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