追放勇者だらけのダンジョン攻略法 ~悪いのは俺じゃない! ついて来ないお前らが悪いんだ!~

Яose

第1章 追放勇者同盟

第1話 プロローグ

 勇者とは、ダンジョン攻略に不可欠な存在。冒険者の憧れ。一党パーティーの花形。英雄の証。

 ある者は前衛として仲間を護る盾となり剣となり、またある者は特異な魔法で仲間を鼓舞し敵を殲滅する後衛の役割をもこなす。

 最優の職業、それが勇者である。

 だがしかし……最優と呼ばれる勇者が、性格まで最優であるとは限らないのが世の常なのだ。




「魔法使い、お前はクビだ」


「え……な、何故ですか勇者様……?」


「付与魔法だかなんだか知らねぇけどな、ロクに効きもしねぇ魔法なんざ必要ねぇんだよ。はっきり言って、お前は足手まといなんだよ」


「そんなっ、待ってください! それは、貴方が……」


「あ゛? 俺が勇者だ、頭目リーダーだ! 俺の命令が聞けねぇ奴は、一党には必要ねぇ。 クビだ、クビ!」



「──いいえ。クビになるのは勇者様、貴方の方ですわ」



「……は? 僧侶テメェ、今何て言った……?」


「足手まといは貴方の方です、"暴勇"の勇者様」



 ここから先はよくある口論と糾弾が続くので要約するが、"暴勇"と呼ばれたこの偉丈夫は、その異名の通り勇猛果敢に敵陣に吶喊し、大剣を軽々と振り回せるほど鍛え抜かれたフィジカルの暴力で駆け出しの頃から目まぐるしい戦果を挙げて来た勇者であった。

 ──しかし、そんなやり方が長続きするはずもなく、次第に己の力量を過信した無謀な吶喊を繰り返し、一党に度々迷惑をかけ続けてきた。

 そしてその度に他人を責めては、メンバーの追放と加入を繰り返して来たという訳だ。


 初めはすぐに落ちる盾騎士、次に火力の全然出ない弓士、その次は見た目が勇者の一党らしくない黒魔術師、続いて使い魔の維持費で家計を圧迫する調教師テイマー、そして冒頭の付与魔法使い。


 この蛮行には一番の古株であった女僧侶も遂に愛想が尽きてしまい、この度勇者に三行半を突きつけるに至ったという訳だ。


「この事態は全て勇者様、貴方の短絡的な思考が招いた結果です。我々はもう、貴方にはついて行けません。貴方が抜けないと言うのであれば、私たちが抜けるまでです……!」


「チクショウ! テメェら役立たずなんざ、こっちから願い下げだ! 全員何処へでも行っちまえ!」


 ──こうして"暴勇"の一党は呆気なく解散となった。

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