「実子誘拐」、その現実とは?

 母親は思わず家を飛び出した。DVに耐えかねてのことだったが、大事な娘を家に置いてきてしまった。後悔しながらも、あてもなく彷徨う内に、母親はある一人の少女に出会う。少女もまた、家出をしていた。そして少女は、ある秘密を抱えていたのだが、母親にはどうすることもできなかった。
 少女とのやり取りに勇気づけられるように家に戻った母親だったが、家では娘が父親にDVを受けていた。苛烈な暴力に晒された娘は、病院に運ばれる。そしてその病院で転機が訪れる。父親の暴力が認められ、両親が離婚することになったのだ。もちろん娘である主人公は、母親との暮らしを望んだ。
 高校生になった主人公は、友達もできて、母親との二人暮らしにも慣れ始めていた。ところが、そこに、ある人物が現れて——。

 社会に当たり前にある偏見。
 子供は実の親から育てられた方が、幸せに決まっている。
 その偏った考えから訴えられる「実子誘拐」という言葉。
 しかし、当人たちは?

 とても社会的な人間ドラマで、日本でも知らない世界がまだまだあるのだと教えて頂きました。心情描写が切なくて、胸に迫ります。

 是非、御一読下さい!