世界霊現象映像倫理委員会より

メイルストロム

そういうところじゃない?


 ──見たら死ぬ。


 そんなうたい文句の付いた映像作品をたった今、私はついうっかり視てしまった。そう言ったものを信じているわけではないが、何事にも万が一と言うものがあるだろう?

 たかだかあんな映像を視た程度で死ぬ事なんて無い、わかっているけれど可能性があるのなら手を打つべきだ。そして幸いなことに、今はネットワークサービスという便利な代物がある。広大なネットワークの海へ潜れば、この手の怪しい噂話に対する対処法も見つかるはずだ。


 ──ほらみろ、あった。

 どうやら件の映像作品は、コピーして三人へ拡散すれば死を回避できるらしい。なにぶん古い記録媒体なので複製には時間がかかるだろうが、死を回避できるのなら惜しむものでもない。

 問題は誰に送りつけるかというところであるが、まぁなんとでもなるだろう。送り付ける相手との関係性は明示されていないし、最悪近所にある寂れた団地のポストへでも投函してしまえばいい。

 あそこに住んでいるのは殆どが単身の中年男性ばかりだ。アダルトなパッケージ写真でもつけてやれば、差出人不明だとしても間違いなく再生する。

 それから私はそれっぽいアダルティックなパッケージ写真を合成しケースを作り上げてから、記録媒体へのダビングを開始。

 唯一難点があるとすれば、ダビング中に元となる映像が再生される事。倍速で流れるとはいえ、あの不気味な白装束の女を見るのはキツい。




 ──ピーッ……ピーッ……ピーッ……

 ダビングを開始してから数分後、パソコンからアラームが上がる。やけに早いとは思ったが、ダビング元となる映像が映像なのだ。二十分にも満たない映像であったし、この程度で終わるのなら万々歳だ。

「……は?」

 後は梱包して投函しに行くだけだと思っていた私は、パソコンに表示された文章を見て絶句した。




 ──警告──


 本映像を権利者の許可なく、複製、配信、配布する事は著作権を侵害する違法行為となり、幽事上の法的制裁を受ける可能性があります。

 また、違法な配布、配信、複製品と知りながら購入/ダウンロードする行為も私的使用目的の複製にはならず、違法となります。


 皆様のご理解とご協力をお願い致します。


 世界霊現象映像倫理委員会。



 ──注意事項──

 本映像の幽霊は××××年○○月△△日に成仏済となります。

 当映像による呪いや祟り等はありませんので、安心してお楽しみ下さい。




「……そういうオチかよっっっっ!」

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世界霊現象映像倫理委員会より メイルストロム @siranui999

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