探してくれるな

誰にでも知られたくないことの一つや二つあるでしょうけれど、なぜ知られたくないのかと言えば人は結局その人個人をもっとも身近な存在として否応なしに好いてしまうからではないかと考えます。他人のことは究極わからないのです。でも自分のことはわかった気になる。だから彼には彼なりに服を脱ぐ理由もあったんだと思います。矛盾だとか不条理だとかそんなことは他者の想像できるスペースでしかありません。そしてこの物語はわからないまま終わらせるところに良さがあります。わからないことは罪ではないと詩も言ってるんです。すっぽんぽんのまま死んだ優しい男の最後の言葉があまりにもロマンチックではありませんか。未踏の雪は真っ新で絵のように輝いている。それ以外のことは引き立て役でしかない。