出来事に意味を求めてしまうのは人の性

 迷宮入りした(作中でする)不可解な事件のお話。

 まったく解明できない不条理な事件と、そこに残された作者不明の詩。
 ミステリらしい、というか、ミステリにおけるロマンのようなものを感じるこの道具立てが魅力的です。

 主人公のような刑事という生業に限らずとも(=事件の解決を目的としていなくても)、起きた出来事にはつい意味や合点のいく解釈を求めてしまうのが人間というもの。
 しかしそれを固く拒むかのような状況が、ただ何も言わずそこにあることに、何か言いようのない情動のようなものを感じてしまいます。

 冒頭の、モアイの逸話が好きです。
 内容もですけど、まず2,000文字に満たない分量の中で、冒頭にこれがあること自体がもう大好き。