腕に救出した少女を抱き、憎悪の瞳でカルネディオ城を睨む、謎の男。
カルネディオ城はその男の驚くべき強大な魔術によって、崩れ落ちる。
それは間違いなく、世界の均衡を崩す烽火であった。
丁寧口調、知識欲旺盛なスフィーリアの賢者──彼こそは藍碧の賢者。
永劫の時を生き、常人には窺い知れぬ悲しみを知る、超越者──レスティー。
「混沌の輪還の秩序を守る──混沌の騎士」
混沌の輪、それは死者の魂の還る場所。
誰が主人公? 皆だよ!
魅力的な登場人物が多くて、もう、読者様は好きな推しメンを作って良いんですよ。
とにかく面白いんです!
読み進めていくうちに、物語から漁師が使う投げ網が私にむかってバーッと放られて、網に捕まった私を物語世界に引きずり込みました。
トゥウェルテナという砂漠の民で、剣舞で戦う美しい女性がいるんですが、私は何回も彼女の名を叫び、「さささ最高です───!!」と惜しみない賛辞をコメント投稿しました。何回もです。
文章が、戦いぶりが、色彩が、人の思いの交錯が、美しい。
さささ最高なんです……!
読書に耽溺するとは、この事ですよ。
追記!
(だって、このレビュー書く時、やっとレビュー書けるの嬉しすぎてテンション高かったんだもん。書こうと思ってたこと、書いてなかったの思い出したのですよ。)
ダークファンタジーと銘打ってありますが、私のなかでは、これは、ダークというより本格ファンタジー、です。
魔霊鬼はたしかにおぞましく、ダーク。闇も描かれている。
でも私がこの物語から感じるのは、一条の光の矢。
登場人物は高潔に前を向きます。心に光を宿し、艱難刻苦にもめげません。
物語を貫くのは光です。
主人公は数多ある世界のうち、中世ファンタジー的な世界である主物質界の調整者、或いは創造主の代行者か、その正体は明らかにされてはおりませんが、作中で私はそのように感じました。
(SF的な例えをすれば、三次元世界に対して四、五次元以降の高次元がその存在をやりすぎない程度に支える……映画「インターステラー」的な感じでしょうか)
彼には役割があるのでしょう。恐らく……「他世界の均衡を破るような世界に主物質界をしない調整」
これも明確には語られておりませんが私なりの推論です。
つまり主人公たるレスティーは「お前らの世界なんだからお前らでなんとかしろ。ただし明らかにバランスが崩れるヤバイ出来事に関しては俺が出張る。最低限だけね」というスタンス。
なんですが……だいぶ面倒見が良いですレスティーさん笑
色々と制約があるであろう超越者レスティーさんは作品の主役でありながら、「主物質界の主役は各人族だからな!!」と言いつつ、限定的な状況下では対魔霊鬼用の戦略級アイテムや魔法、技を授けてくれます。
とは言え、介入は最低限。
チート能力やら流行りに迎合した作品で山場も余りなく「この小説何したいの?何を表現したいの?」という作品に辟易した方には、原点的日本ファンタジーのこの作品にどっぷりと浸っていただければと思います。
**ここからは蛇足**
読んでいけば読む力もつきます。
安易な文体、表現ばかり読んでちゃ感性が先細る一方です。限られた分かり易い物ばかりしか楽しめないって、ちょっと虚しくないでしょうか? 偉そうに書いてしまいすいません。しかし、日本語の多彩な表現をせっかく日本人は堪能できる立場に身を置いているのです。
ぜひ、現代の読者には『ファンタジー小説』というジャンルを、更に間口を広げて楽しんでいただきたいものです。
そういう意味でも、この作品は非常におすすめです。作者様も丁寧に改行やルビ振りをしていて、読みやすくしてくれています。ぜひ、ご一読を!
まず目に引くのはその文体です。
ライトノベルに往々にして見られる『サクサク読める』『テンポが良い』とは路線を違える作品です。
故に読み始めで、読者を容赦なく篩にかける事でしょう。
しかしその描写は深く、特に人物の心の機微がとても丁寧に描かれています。
腰を据え、じっくり読む事をお勧めします。
そして気付く事でしょう、読み進めるうちにこの重厚な世界観にどっぷりと浸ってしまった自分がいる事に。
それはもはや、『サクサク読める』全ての作品に、何か物足りなさを感じてしまう程の“中毒性”を持っています。
今後、主人公或いは他のキャラを通して、作者が何を読者に訴えたいか、それをどう表現してくるか、とても楽しみな作品です!
妥協を許さない、鍛え抜かれた筆力!!
まず目に飛び込んできたのは、これです。
天体や気候といった莫大なものから描写を始めているというのに、風の流れや気温、人物のわずかな目の動きまで、丁寧に、しかし決して冗長ではなく描き出す描写力がゆえに、この恐ろしくも美しい世界が目の前にありありと立ち現れてくるんです。
魔法による破壊という、この世にありえない事象を、かくも肌に迫る圧を持って描けるものだとは。
圧倒されたら、もう手遅れ。
気が付けば、人の命が軽く、悪が跋扈するこの残酷な世界で、押し流されそうになりながらも必死で抗おうとする人々の姿に、惹きつけられてしまっています。
私がこちらの作品でもっとも好きな部分は、強大な力を持つ存在を、いかにただの人間たちとかけ離れた高位者であるか雄弁に語りながらも、そんな彼らですら「心」持つ者として、その躊躇いや胸の痛み、優しさを、丁寧に書いてくれていることです。
どんな暴虐の嵐のなかにあっても、どんな人知を超えた力を持ったとしても、人はどこまでも人なのだと。
作者様の温かい人間観が垣間見えるようで、とても胸を打たれます。
果てしなく広がる、重厚な闇。
だからこそ、必死で生きる命が強くかがやく。
容赦のない世界観、息をつかせぬプロット、創作言語まで作り出したバキバキに練り上げられた設定、気高くも愛くるしい魅力的な登場人物。
2周3周と読んでしまうこの読み応えに、「そうそう……読書ってこういうものだったよ!!」と、古の本好きは間違いなく満足できるはず。
しかし、読めば読むほど…この世界に転生したくはないと、強く思いますね!笑
魔術も魔霊鬼も、何なら人間も、おっかなすぎます。
秒で死ぬ自信しかありません。
古の幻想世界が、生身の人間がそのへん歩いていたら即死んでいたような、非常に過酷な魔境だったことも思い出させてくれる物語。
かつてファンタジー小説を夢中で読む少年少女だった、すべての大人に届いてほしい大傑作です!!
1話目から肩に圧し掛かるほどような暗闇の世界が広がっています。
綿密な描写で綴られる世界に引かれる、というよりも引きずり込まれる、という表現が正しいかもしれません。それほどに確立した世界観です。
言葉でダークファンタジーと銘打つ作品は多々ありますが、舞台や描写そして会話、物語全てに息が詰まるような濃い闇を匂わせる作品は稀でありながら、この作品は数少ないそんな一つに該当すると思います。
導入で神話と言われるモノが崩壊するシーンはここから始まる戦乱を読み手に伝えるには十分であり、事実その後に続く物語が1話の空気をより色濃く仕上げていく堂々たるダークファンタジーです!
地の文多めとの注釈も入っていますが、それこそがまさにこの物語の土台です。
会話文多めのリズム良い作品ももちろん素敵ですが、このような土台からできた濃密な時間を過ごすのも読書の醍醐味だと思います!
みなさんもこの動乱の時代に飛び込んでみてはいかがでしょうか!
十一話まで読んだ時点でのレビューになります。
重厚かつしっかりした世界観。
世界独自の言語や、時間や長さに独自の単位を用いられて彩られる、圧倒的な雰囲気。
おそらくは世界設定の構築に相当時間をかけたのだろうな、と窺えます。
それもそれが理解できるのは本作を読み始めてすぐです。
一話ですでに固有名詞が並び、世界観をがっちり見せつけてくるので、そこに引き込まれればあとは怒涛の展開に飲み込まれていくでしょう。
多方面の視点から語られる、緊迫感のあるストーリー。
とある国の国境付近にある、防衛の要所であった城の消失に端を発し、様々な人物の思惑が交錯する展開には、常に緊張感が漂っているようでした。
消えた城を擁していた側、城を消した側、そして介入する人知を超えた存在。
また、それらを取り巻く諸外国の存在にも言及され、一つの事件が様々な方面へ波及している様を見る事が出来るでしょう。
それらを表現するのは固く、重みのある語り口であり、今の流行りからは少し離れているような文体ではあるものの、お話の雰囲気にはこれ以上なく合致しており、損なうことなく、十全に魅力を出していると思います。
とっつきにくさはあります。
膨大なキャラクター量と、移り気な描写視点に加え、人名と土地名、加えてエルフの部族名や魔術名のルビにも固有名詞が付けられ、情報量が半端ではなく、途中でこんがらがる事も多くあるでしょう。
それらをすべて魅力と捉えられるならば、この作品は無二の作品になると思います。
様々な感情、思惑渦巻くこの世界。過去と現在、そして未来までも巻き込んで、彼らと共に進んでいく。
心揺さぶる心理描写とキャラクターたちが頭の中で踊るような戦闘描写は圧巻の一言です。
そして、作中には個性豊かなキャラクター達がたくさん!私のお気に入りは王女の三姉妹。頭も切れて強くてカッコよい彼女たちに憧れます。だけど彼女たちの魅力はそれだけではなく、時折見せてくれる年相応な女の子の部分にキュンキュンが止まりません。もう本当に可愛いし愛おしいこの三姉妹。
魅力的なキャラクター達が大活躍するこの世界。彼らの感情が複雑に交錯し、物語が加速していく。
作者様が緻密に紡ぐ出すこの美しい世界をあなたも堪能してみませんか?読み応え抜群!虜になること間違いなしの一作です!