とっつきにくさと引き換えに、無二の魅力

十一話まで読んだ時点でのレビューになります。

重厚かつしっかりした世界観。
世界独自の言語や、時間や長さに独自の単位を用いられて彩られる、圧倒的な雰囲気。
おそらくは世界設定の構築に相当時間をかけたのだろうな、と窺えます。
それもそれが理解できるのは本作を読み始めてすぐです。
一話ですでに固有名詞が並び、世界観をがっちり見せつけてくるので、そこに引き込まれればあとは怒涛の展開に飲み込まれていくでしょう。

多方面の視点から語られる、緊迫感のあるストーリー。
とある国の国境付近にある、防衛の要所であった城の消失に端を発し、様々な人物の思惑が交錯する展開には、常に緊張感が漂っているようでした。
消えた城を擁していた側、城を消した側、そして介入する人知を超えた存在。
また、それらを取り巻く諸外国の存在にも言及され、一つの事件が様々な方面へ波及している様を見る事が出来るでしょう。
それらを表現するのは固く、重みのある語り口であり、今の流行りからは少し離れているような文体ではあるものの、お話の雰囲気にはこれ以上なく合致しており、損なうことなく、十全に魅力を出していると思います。

とっつきにくさはあります。
膨大なキャラクター量と、移り気な描写視点に加え、人名と土地名、加えてエルフの部族名や魔術名のルビにも固有名詞が付けられ、情報量が半端ではなく、途中でこんがらがる事も多くあるでしょう。
それらをすべて魅力と捉えられるならば、この作品は無二の作品になると思います。

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