別状、あり

別状、あり　　　　　　　　　　　　　　　　　　　尾花松五作

二〇一五年七月十五日。東京―鳥取間を走るワイナリー・ツアーバスが山梨県勝沼付近の中央高速道路から防音壁を突き破って転落。揮発性の高いニューエナジー‘トリシモン’を積んでいたバスは爆破し、運転手を含む乗客二十六名が焼死した。唯一の生存者、佐々木美穂は一人の焼死体を抱きかかえるような状態で救出されたものの、顔に大火傷を負い特別病棟に入ったまま。事故の検証を進めるうちに欠けたナイフが一本出てきたことで、男女二人の刑事が其々の方策で捜査をはじめる。
‘オレはやったぞ。遂にやったぞ’――　藤澤麻利絵刑事はヴォイス・レコーダーにそう残したバス運転手が‘道連れ自殺事故’を起こしたのではと嫌疑をかけ、乗客のほぼ半数と過去に関連があったことをつきと…続きを読む