アナタが見てる、その子も見てる、人形は決して離れてはくれない

最後まで読了しましたのでレビューをば。
タイトル『人形A』。沖田ねてるさんが書き綴る珠玉のホラー。
主人公の女子大学生コヤケの部屋に突如現れた布製で女の子の人形『あーちゃん』、その子と出会った事をきっかけにコヤケの平穏だった日常が少しずつ狂い始めていく。

部屋で次々に起きる奇妙な現象、誰かの視線を感じる、物が勝手に動く、それはまるでポルターガイストの様で……コヤケは親友のランちゃんと彼氏のユウヤくんに相談して『あーちゃん』が原因なのではと結論に至り解決するために動き始めた。

捨てても帰って来る『あーちゃん』、ならばと怪奇現象の専門家に見てもらおうとしたが……人形に張り巡らされた狂気は誰もの想像を超えており、事態は最悪の方向へと落ちていく――。

謎の人形『あーちゃん』を軸に怪奇現象が起こる序盤の不気味さはホラー映画を見た感覚になるほどリアルで湿度が高い、最初は気のせい程度だった現象が少しづつ大きくなり、ある時点を境に死の恐怖が付きまとうくらい手遅れに、主人公コヤケの精神が崩れていくのは見ごたえ抜群でした。

どうして突然、立て続けにこんな現象が起きてしまったのか? 恐怖と並行するこの謎も作品の見所です。今作は上下と分かれておりこの作りもまた上手いと唸りました、何より各話のサブタイトルに隠された意味を理解したときの寒気は忘れられません。

タイトル欄から本文に至るまで沖田さんによるギミックが練り込まれた素晴らしい一作。物語を読み進める内に明らかになる常軌を逸した『狂気』の連続に言葉を無くすこと間違いありません。

邦画ホラーのじめっとした空気と人間関係、人形『あーちゃん』が向け続ける視線。真実が明かされた時に読者を襲う圧倒的な救いの無さ。
是非、読んでもらいたい作品です。どうぞ狂い続ける世界をお楽しみください。
 

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