白いひとりと、黒いひとつ。不思議なコンビのあやかし奇譚!

白い布で顔のほとんどを覆った怪しい白装束の旅僧。そしていつも彼と共にあるのは、異様な気配をまとった葛籠――。
風変わりなこのコンビが往くのは、平和とは程遠い時代の日本です。

青年はべべんっと琵琶を慣らしながら、道中出会った者に不思議なあやかしたちの物語を語り聴かせます。それは歴史に名高いあやかしたち、彼らにまつわる真実の物語。到底体験できるはずもないその昔話を、坊主はさも己の身に起こったかのように軽快に語るのです。

その語りの中で旅をするは、白い布で顔のほとんどを覆った白装束の“少年”――そして口うるさく小言を吐きながら彼に背負われる、子供には大きすぎる“葛籠”。

はてさて、その物語は御伽話かまことの歴史か。狐に化かされたかのような、深い霧たちこめる山道に迷い込んでしまったかのような不思議な話の数々に、現代の私たちなどたやすく呑み込まれてしまいそうです。背筋が凍りそうなホラーから、胸がすくようなどんでん返し、さらにはほろりと涙を誘う感動話まで。四季のような彩と変化を絶やさずに各話が広がり、やがて少年と葛籠の旅は己たちに課された“罪と罰”と対峙することに。不器用な絆で結ばれたふたりが辿り着く結末は感涙必至。

歴史の授業はほとんど寝ていた人間でも夢中になって読んでしまったほどの秀作、ぜひご覧くださいませ!

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