第10話 依頼

アマゾニスたちが狩りへ行っている間、長老と医者のカルクで村の留守番をしていた。

「今日はライガーフィッシュ捕りでみんなずぶ濡れになって帰ってくるだろう」

長老がいつも通り、煙管から煙だし、にやけてる。

「アマンダが大きな槍を、それこそドラゴン退治より、太くて長い槍を持っていきましたけど、どんな生き物なんですか?」

「大きさはドラゴンと変わらないが、やつ《ライガーフィッシュ》は海だからな水中だと動きが速いが陸に上げればただのデカ物だ」

「そうなんですね。それでも心配だな」

「私がいるから大丈夫ですよ」

カルクが腕を組みながらいった。

俺たちが狩りに行ったアマゾニスを心配していると、マントを着た小さな少女が立っていた。

俺はその子のあまりの小ささに目を疑ったが俺がいた世界だと平均的サイズの少女だった。

年齢は中学生半ばとかだろうか?

彼女が長老へ近づいていくと頭を下げ、丁寧にいった。

「私は『ティマヌ』村より参りました。『タリパ』と申します。村を代表してお伺いに参りました」

タリパは自分より遥かに大きいアマゾニスの長老とカルクに怯えることなく堂々と言った。

「遠いところからお越しいただきありがとうございます」

長老も頭を下げ、カルクはタリパが羽織っていたマントを預かり、俺はお茶の準備を始めた。

長老の家に行き、タリパの事情を聞くことになった。

思わず彼女の姿が気になってしまった。

彼女の服はいわゆる半袖短パンと言った出で立ちだが、目を引いたのはそこから肌部分に施されているペイントのような入れ墨だった。

右側の頬に赤い三角形。左足には爪先から膝、それより先もあるのだろうか赤い線が真っ直ぐ引かれ、両手首にはリング状にやはり赤い模様が施されていた。

こういった世界だからそういった民族がいても不思議ではないが、彼女の姿は威厳があり、神々しささえ感じた。

「ティマヌ……『神の楽園』ですね」

神の楽園……思わぬ言葉が出てきて、お茶を運ぶのに使ったトレイを落としそうになった。

タリパに神々しさを感じたのはそういうことだったのか?

「ええ。実はここ3カ月ばかり、戦いの神である『トタル』様が荒れておりまして『戦いたい』とずっと言っておりますのです」

「ほう……」

長老は興味深げに耳を傾けた。

「ティマヌでは常にトタル様の前で村人同士が戦う姿を見せていたのですが、本人も戦いたいと仰ってしまって……もちろん、誰もトタル様にかなうはずがありません」

「戦いの神だからか……」

「なんとか、抑えてもらっているのですが、限界が近づき、もしかしたら村が滅んでしまうかもしれません」

「他の神さまたちの説得でもダメか?」

「ええ。説得を続けたら、何が起きるかわかりません」

「私たちの村では1人でも神がかけてはいけないのです」

「そうか……」

「そこで、お願いなのですが、この村で一番強い方をご紹介願いたいのです!」

冷静にしゃべっていたタリパから感情が飛び出した。

「強い……となると……」

長老もカルクも俺を見た。

「この方が、村で一番……?」

「あ、いや、俺は……」

「この男の妻が一番強いな。名は『アマンダ』」

長老は当たり前のように、その名を口にした。




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