第9話 縮まる距離
アマンダと俺は同じベッドで寝ている。
夫婦だから当たり前だろ? と思われるかもしれないが彼女のベッドがとても大きいので、わざわざ俺のベッドを作ることもないだろうとの提案だった。
アマンダは村一番の戦士で誇りである。
生きる伝説と同じベッドで寝ている自分が滑稽に思えてくる。
そんなことを考えながら、ひとり笑っているとアマンダが俺の手を掴み、柔らかく抱き締めた。
俺は急なことで心臓が跳び跳ねそうになった。
アマンダは寝ているが俺を撫でたり、髪の毛に頬を擦りよせたりとまるで小動物を扱うかのような感覚だ。
ごく稀に、動物と遊ぶ夢を見ているのか、俺はその度に小動物になる。
悪い気はしなかった。
安心して自分に甘えてくれているアマンダが可愛かったからだ。
アマンダの大きな胸が自分の顔を包むと、股間が熱くなる。
正面に向いている状態で抱きつかれているので何とかアマンダが背中側を抱いている形にしようと力を入れるも、相手は村一番の戦士。平均男性30半ばには太刀打ちなど出来なかった。
アマンダの腕が緩んだ瞬間、俺はアマンダに背を向ける形になった。
熱くなっている股間をなるべく見せたくなかったのだ。
背中から腕が離れていく。
気がつくと朝になっていたようだ。
「イチロウ、おはよう。今日は隣の村で交流会の日だから。遅刻できないぞ」
「あ、ああ。そうだな」
「その、イチロウ。お前は私のこと好きだな」
「当たり前じゃないか」
「いつも私とピッタリ一緒に寝てる……」
「大好きだから」
「イチロウ、夫婦だから遠慮することないからな」
「ありがとう。アマンダも気を使わなくて大丈夫だからな」
アマンダにはとっくにバレていたようだ。
次、寝るときはきっと……。
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