墜落のための上昇

 本作は、ある意味で逆説の知的思考を突き詰めた結晶のごとき内容だと思う。

 生身の人類なるものが理想の社会を得るためには、生身を捨てねばならない。といって、『万全の』身体を得ると生身としての感覚を追求したくなる。

 そんな逆説をいったりきたりしながら、主人公はひたすら登る。周囲の光景は、人類が目指してきた諸々のカリカチュアそのものだ。

 究極の飛翔は墜落である。

 必読本作。

その他のおすすめレビュー

マスケッターさんの他のおすすめレビュー2,143