圧倒的スケールで描く、生き残りを賭けた仏教東方伝播の旅! ※神仏視点

導入話を拝読した直後に、
文句なしの星三つを献上した、とんでもないポテンシャルを秘める歴史超大作です。

民俗学や宗教史に詳しい方なら、冒頭のエピソードだけで、作者様がこれから描こうとしている物語の顛末が先読みできる仕様です。
盛大なネタバレを、一番最初に持ってくる作者様の大胆不敵さは、まさに本作の主人公、毘沙門天の如し。

そして、どっしりとした地の文章に支えられた骨太ストーリーは、硬派でありながら説明的になりすぎず、しかし必要不可欠な描写は端的に入れてあり、
歴史物ニガテ、宗教分からん勢も含めた不特定多数への心くばりを感じる、とても丁寧な作品です。

何より、下調べの奥行きの深さと幅を読み進めるたびに、ひしひしと感じる情報量の豊富さ。
この作品のために、いったい寺社仏閣へどれだけ足を運んだんだろうと、感嘆するばかりです。

文章そのものは、ライトノベルからはトンとかけ離れています(笑)

しかし、だからこそ、その上で踊る登場神仏たちの個性豊かな言動が軽やかに際立ちます。

最強クールなナイスガイなのに、どこか抜けてる毘沙門天(主人公)。
どうしてここまで……不憫属性が極まるかつてのインドラの王、帝釈天。そして、不遇のラーヴァナ(毘沙門天の弟)。
極めた悟りはどこ行った——新興勢力にグイグイ来られて、日和って踊る如来さま方。

異能の最高傑作、神仏もその力の源は、取りも直さず、絶対的な信者の数!
仏教の生まれた国、インドで巻き起こる新旧混合宗教間の葛藤を、神仏視点で綴ると、これほど心躍るエンタメになるのかと舌を巻きます。

インドで最も影響力のある宗教が何かは、我々もよく知るところ。
本作は、本国で一時期の勢いを失った仏教(如来&菩薩たち)が、自分たちの存亡を賭けて東方へと活路を見出そうと奮闘する様を描いた新規信者獲得・陣取り合戦(神仏視点)です。

その仏教伝播を一任された毘沙門天率いる夜叉一族の東方遠征(時々、楽しい遠足)の先に待ち受けるものとは——?
宗教カスタムしてしまう少数民族相手に、果たして仏教は生き残ることができるのか——?

大日如来「ええんやけど……何か、思てたんとちゃう……」←多分、こうなる。

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