虚構と現実、狂気、幻想、理不尽で不条理な探偵小説


さびれた探偵事務所を営む冴えない中年探偵の元に舞い込む奇妙な依頼。

序盤は探偵物語や濱マイクシリーズのような探偵物小説かと思いきやどうにも様子がおかしい。×が並ぶ謎の貸ビル。その最上階にある肉屋やクリーニング屋。賽の河原の冥土カフェ。人が詰まるサンドバッグのボクシングジム……
 スプラッタでホラーな事柄さえも淡々と描写されサイケデリックをも思わせる狂気の世界は酒を飲みすぎた主人公の幻覚なのか、それともドラッグによる迷妄か、誰かの夢の世界か悩むうちに突如現実に引き戻されていく。
でもそれもまた幻想かもしれない。

虚構と現実の道を危うく間違えそうになる怪奇ミステリー。

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