取り調べ

 太い眉毛、大きなギョロ目、厚い唇……それらのパーツが彫りの深い顔の中に所狭しと敷き詰められている。ホラー映画に出ても特殊メーク不要。それが、松浦の見た猿渡の印象だ。それらが相まって強烈なインパクトとなって襲ってくる。

「……つまり、天井から水漏れがあったんで苦情を言いにいったら、ガイシャが死んでて、そばにあんたが所有しているスタンガンが落ちてたんで、見つかったら自分が疑われると思い、それを持ち去って逃げた……そういうことか?」

「ええ、そうなんです」

 松浦がすがるような眼差しを向けると、猿渡は一瞬笑顔を向けたが、次の瞬間、机をドンと叩いた。

「ふざけんな、今どき小学生だってもっとマシなウソつくわ!」

「ウソじゃありません、信じて下さい!」

「現場に凶器を置き忘れるバカな殺人犯がどこにいる。それはあんたが今回の犯行のために用意していたものだろう!」

「これはずっと前から持っていたものです。以前、不良に絡まれたことがあって、それから町を歩くのが怖くなってあれを購入し持ち歩くようになったんです。だけどそれがある日妻に見つかって、『こんな恐ろしいものを持ち歩く人とやっていけない』と三行半みくだりはんを突きつけられました」

「その別れ話で、ガイシャはあんたに不利な証言をしているそうだな。それに近所の話によれば、あんたとガイシャはあまり関係性が良くなかったらしいな」

「そんな……それくらいのことで殺したりしませんよ!」

「殺しの犯人ていうのは、捕まればみなそう言うんだ。とにかく、本当のことを言うまで帰れないから覚悟しておくんだな」

「え……このまま拘留ですか? 困りますよ、せめて職場の誰かと連絡させて下さい!」

「あいにくだが、あんたが今連絡出来るのは弁護士だけだ。誰か心当たりあるか?」

 松浦は思いめぐらせたが、思い当たるのは一人だけだ。

「すみません、香取結子弁護士を呼んで下さい」

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