神々の犯行。神々の痕跡。手をこまねき、記録するだけの人間。

善とも悪ともつかず、目的も理由もない。ただ人智を超えた存在、それが「神」。

役所から派遣された片岸と宮木は、「領怪神犯」と呼ばれる怪奇現象を調査していた。
ある村では神の身体の一部が定期的に舞い降り、またある村では死者の内臓が食い荒らされる。片岸と宮木は記録はしても解決策を見出すことはできず、ただその場しのぎの対応に終始する。果たして、人の手に「領怪神犯」に抗うすべはあるのか――?

各話は「序」と「一、二、三」で構成されている。
「序」では村人の軽妙な語り口によって怪異が語られる。しかし、どこかピントのずれた説明によって、恐怖感を煽られるとともに、「神」への興味が掻き立てられることだろう。
そして、「一、二、三」では主人公である二人が登場し、調査を行う。だが、そこで恐怖は絶望と畏怖へと変わっていく。強い実感とともに、神々は人の手には負えないという事実を突き付けられるからだ。

作者の変幻自在な語り口の妙、奇異なる行動をする得体の知れない神々、それに対する主人公たちの焦燥。そのどれもが読者を絶望の淵へと誘導していく。
人智を超えた存在をまざまざと描き、理解できないままに圧倒的な余韻を残す伝奇ホラーの快作。

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